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京都大学重田教授のねむ理論

重田眞義さん
NPO法人睡眠文化研究会 理事
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究 研究科 教授

動画コメントが届きました! 記事の最後に掲載しています。

いよいよ『世界睡眠会議』がスタートします。今、なぜ睡眠なのか。NPO法人睡眠文化研究会のキーパーソンでもある京都大学教授の重田眞義さんに「よりよい眠り」のポイントを伺ってきました。

−そもそも「睡眠文化」って何ですか?

重田:たとえば「食文化」ってあるでしょ。食文化という考え方もそれほど古いものではなくて、いわゆる「栄養主義」への反発を原動力にして広がった。初期の宇宙食みたいに、人体に必要な栄養をハミガキ粉のチューブみたいなものに詰め込んで「これでいいだろ」という食べ物の対極に「グルメ」や食文化があるんです。

睡眠に置き換えてみると、何時間、どういうふうに眠るのが正しいかということを研究する「睡眠科学」しかなくて、「おいしいものを食べたい」に対応するような文化的視点が欠落してました。つまり、チューブに入った宇宙食的な眠りが、ベストな眠りだと思い込んでいたっていうことですね。

でも、実は睡眠は人それぞれで多様なもの。気持ちよく眠れて、すっきり目覚めることが大切でしょ。眠りをもっと楽しめばいいという考え方が、睡眠文化研究の原点ですね。

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−重田先生が「睡眠文化」研究を始めたきっかけは?

重田:私が睡眠文化の研究に関わるようになったのは、同じ京都大学の吉田集而(しゅうじ)先生(2004年にご逝去)に誘われたのがきっかけです。ちなみに、京都大学の文化人類学者には変わり種が多いんですよ。吉田先生は薬学の出身でした。私は農学の出身ですし、宇宙物理学から文化人類学へすすんだ人もいます。

吉田先生は、学問的にはあまり注目されていなかった人間の行動に注目して「面白い研究をやろう」というのがモットーでした。旅や風呂、酒の研究などをした次に注目したのが「睡眠」だったということで。当時から私はアフリカの研究をしていたので「アフリカの眠りを研究してみないか」と声を掛けていただいたわけです。

最初「睡眠文化」と聞いたときには「それ、何ですのん?」と(笑)。でも、直感的に「これは面白そうだ」とも感じましたね。

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−アフリカの眠りから、何か「発見」はありましたか?

重田:医学や生理学を軸にしたいわゆる「睡眠科学」では、眠れないとかすっきり目覚められないといった「問題」を解決しようとします。たとえば、当時から日本では「子どもがちゃんと眠らない」ということが問題になっていました。夜更かししたり、朝起きられなかったり、日中も眠くて勉強ができない、きちんと睡眠を取れてない子はキレやすい、みたいなことですね。

ところがアフリカで調べてみると「子どもは寝るよ?」と、こちらの質問が空回りしてしまうんですよ。子どもの睡眠に「問題」なんてなかったんです。そもそも、大人でさえも「何時には眠らなければいけない」といった強迫観念なんて持っていませんでした。

これは「アフリカの生活は原始的」ということではありません。日本とアフリカの眠りの違いを実感して、「睡眠は多様」なんだという当然のことに気付くことができたんです。

最近ではアフリカでもゲームやスマートフォンが普及していますから、今、同じ調査をすると状況は変わっているかも知れません。でも、それもまた「睡眠は変化する」という睡眠文化の大切なポイントを教えてくれるといえますね。

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−「睡眠」を文化として考えることのメリットは?

重田:われわれ研究者もそうですが、世の中にはどうしても不規則な生活になってしまう仕事をしている人がたくさんいます。きちんと眠っていないと悩み、かえって不眠になってしまうようなケースも多いでしょう。でも、睡眠文化研究の真骨頂でもある「睡眠は多様」という考え方からすれば、不規則な睡眠や不眠をプレッシャーに感じる必要はない。極論すれば、眠りたい時に眠ればいいだけのことなんですね。

臨床心理学がご専門の中川昌先生(奈良大学)から、こんなエピソードを聞いたことがあります。不眠に悩むおばあちゃんが、眠れないことを理由に救急車を呼ぶことがあったそうです。たびたび電話してくることに困った病院が「電話してこないで」と断っても止まりません。そこで、ある夜、当直だった中川がおばあちゃんに自分の携帯電話の番号を教えて「いつでも電話してきてね」と言うと、安心したおばあちゃんがちゃんと眠れるようになったというんです。

不眠に悩む人が、枕元に睡眠導入剤を用意しておくと安眠できる例もあると聞きます。不眠症などの診断を受けるほどではない方でも、眠るときにそばにある「眠り小物」があるのではないでしょうか。

それならば、睡眠文化として「眠り小物」を研究してみると面白い。つまり「眠りをもっと楽しもう」という考え方が、睡眠文化研究そのものなんですね。これは、この『世界睡眠会議』のコンセプトともぴったりじゃないですか?

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−「眠りを楽しむ」のは楽しそうです!

重田:きちんと眠れば気持ちいいのは、誰でも知っていることです。でも、現実は生活に合わせて余った時間で眠っています。仕事や遊びが優先で、睡眠を二の次にしているから、眠る時間が不規則になって問題を抱えてしまうんですね。

睡眠文化研究では「起きている時間のために眠る」のではなく、「眠りの時間を大切にすることで起きている時間が楽しくなる」という逆転の発想をスタートラインにしています。つまり「眠り中心主義」ですね。

現実に「眠り中心」の生活を実践するのは、現代の日本社会では、まあなかなか難しいことではあるんですが。眠りをもっと楽しもうという意識をもつことによって、生活そのものを変えていけるのではないかということです。

−つまり、自分が楽しい眠り方を見つければいい?

重田:その通りです。初めて睡眠文化の講義などを受けた方のなかにも、睡眠の多様性に気付いて「なるほど!」とおっしゃるケースが少なくありません。そもそも睡眠は生理学的な行動なので、科学的に正しい眠り方があると思い込んでいるんです。でも、世界の睡眠文化を調べるだけでも、極北から熱帯まで、実にさまざまな眠り方がある。最終的には地域や文化の違いを超えて、人それぞれ、個人の多様性を認めることに繋がります。

睡眠に「正解」なんてないんです。あなたと私の眠り方が同じである必要はないし、自分自身が気持ちよく眠れる方法が見つかれば、何も問題はありません。つまり正しい睡眠とは、「眠りをもっと楽しもう!」という考え方に集約されるということですね。

−普通の人が「睡眠文化」を学ぶには?

重田:京都大学と立教大学で、睡眠文化の講義をしています。また、一般市民向けにシンポジウムなども定期的に開催していて、その成果を書籍にもまとめていますので、ぜひ読んでみてください。この『世界睡眠会議』も、睡眠文化への入り口として楽しいウェブサイトになることを期待してます。

また、2016年4月6日〜6月26日まで、京都大学総合博物館で『ねむり展』を開催します。「人はいつ、どこで、どうやって眠ってきたのか?」をサブタイトルとして、京都大学や睡眠文化研究会で今まで探求してきたことの総まとめといった内容の展示を行います。読み応えある図録も出しますから、手にとってみてください。

『ねむり展』を通じてぜひ感じていただきたいのが「睡眠は多様である」ということと「睡眠のあり方は不変ではない」ということです。眠りの多様さや移ろいやすさを知ることで、自分の眠りは「これでいいのだ!」と感じていただければいいですね。

重田先生、ありがとうございました!
睡眠文化研究会の皆さまには、この世界睡眠会議の監修もお願いしています。いろいろな「眠りの楽しさ」を見つけ出すために『世界睡眠会議』も頑張ります!

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重田眞義 しげたまさよし
NPO法人睡眠文化研究会 理事
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究 研究科 教授
1956年京都生まれ。博士(農学)。主な論文に「エチオピア起源の作物エンセーテの多様性を守る人々の営み」(『遺伝』58巻5号)、「嗜好品とともにすぎゆくエチオピア高地の1日」(『嗜好品の文化人類学』講談社)、編著に『アフリカ農業の諸問題』(京都大学学術出版会)など。

関連書籍『睡眠文化を学ぶ人のために』高田公理、重田眞義、堀忠男編 世界思想社 2008年

京都大学総合博物館 平成28年度特別展
「ねむり展:眠れるものの文化誌」~人はいつ、どこで、どうやって眠ってきたのか?
期間:2016年4月6日(水)~6月26日(日)
場所:京都大学総合博物館
詳しくはねむり展ウェブサイトまで。

重田眞義教授は、4月24日、世界睡眠会議ウェルカム・シンポジウムに出演されます。場所は、京都大学百周年記念ホール。シンポジウムには山田五郎さん、藤本憲一教授らも登壇されます。みうらじゅんさんの特別授業もあります。ぜひご参加ください。

詳細はこちらから!

重田先生からコメント動画が届きました!

suichanmark014月24日のシンポジウム、楽しみだなー。

更新日:2016年3月18日 書いた人:寄本好則

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