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あなたは眠りに落ちる直前、いったいなにを考えていますか? 眠る前にする決まった行動はありますか? 眠るときにはどんな恰好で、どんな寝具を使って寝ていますか?

私はこれまで、飲み会や会議のあとに隙あらば、その場にいる人の「眠り方」を尋ねるというのを密やかな趣味としてきました。趣味が高じて、構成作家をしているTBSラジオの番組「 ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」で二回ほど特集したこともあります。(変態っぽくてよかった、とおかげさまで大好評です)

この「入眠調査」をしていてわかったことは、皆、じつは人それぞれに独特のルーティンを持っていること。そしてさらに、それぞれが己のルーティンのヘンさを自覚していない、ということでした。

興味深いのは、そもそも自分の眠り方について語ったことがある人はほとんどおらず、話しながら自分のルーティンの奇妙さを自覚していく……といったプロセスを目の当たりにすることが本当に多かったことです。

夢の話は雑談ネタの鉄板です。不眠や睡眠障害の悩み、あるいは快適な睡眠方法を教えてくれる書籍は本屋で何十冊も見つかります。しかし、ただ単に眠りのルーティンや、自分の眠りかたを語る行為がさほど一般的でないのは、一体なぜなのでしょう?

当連載ではさまざまな人に眠りのルーティン──筆者は「入眠の儀」と呼んでいます──をインタビューしていきながら、その謎に答えていきたいと考えています。そして、眠りについて語ることは案外おもしろいと、そんなことも伝えていけたらと思っています。

すっきり眠れて仕事も快調、生活の質が上がります! というような、すぐにあなたの生活に役立つ情報は、残念ながらほとんど出てきません。しかし、市井の人々の多様な「眠りのかたち」を知ることで、睡眠は単なる生理現象ではなく、社会的な振る舞いだとつまびらかにしていきたい。食事がいつしか単なる栄養補給の手段から、文化的な行為であると認識され、その多様性も含めて受容されていったように、眠りもまた時代や文化によって大きく異なる社会的な営みであると、我々が捉え直せたら。

この連載の果てに、いつか昨日よりほんのちょっと自由で、あなたらしい眠りと出会える日がくるかもしれません。

入眠調査室室長:古川 耕

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入眠調査 FILE:01
一見、ちゃんとしてる人
(後編)

調査対象 「しまおまほ」さん

shimaomaho

1978年東京生まれ。多摩美術大学二部芸術学科卒業。1997年に漫画『女子高生ゴリコ』でデビュー後、カルチャー誌や文芸誌にイラストやエッセイを寄稿。TBSラジオで毎週土曜日に放送する『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』にレギュラー出演するなど、さまざまな分野で活動。著書に『しまおまほのひとりオリーブ調査隊』(プチグラパブリッシング)、『まほちゃんの家』(WAVE出版)、『ガールフレンド』(P-vine Books)、『マイリトル世田谷』(スペースシャワーブックス)などがある。


睡眠問診票

入眠時刻と起床時刻 : 23:00頃~9:30頃
平均睡眠時間 : 9時間(絶対そのくらい寝たい)
寝るときの服 : Tシャツ、スウェットズボン
ベッドor布団 : せんべい布団
寝るときの部屋の明るさ : 豆電球(本当は真っ暗がベスト)
寝る前に必ずすること : 入浴 SNS系チェック
睡眠とは? : 全てから解放される自由な時間!

睡眠大切派にして全部まとめたい派

前編からの続き

─ しまおさん、話しを聞いていると、意外と睡眠を大切にしている派なんですね。

しまお 大切にしてます。徹夜ができないし、そもそも性格はルーズなのに本当はキチッとしたいっていう……キチッとしたものへの憧れがあるんだと思う。それで、一応睡眠だけはちゃんとしようということで、せめて寝る前にはお風呂に入ったりしてるんだと思います。あ、でも、締切が近い時は本当に寝られなくて、なんにも書いてなくても寝ないんですよ。明け方まで起きてるの。4時とか5時とか。で、もう倒れ込むように寝て、また朝9時とか10時ぐらいに起きて、次の夜も朝4時ぐらいまで起きている。書ける時もあるし、なにも書けなくて……ただパソコンと向かい合っているだけの時もあるし。

─ それはしんどいですね。

しまお 1文字も書けなくとも、納得いくまでパソコンと向き合う。そうしないと眠れないし、書けないですね。

─ すごい。それはそれでちゃんとしてるっぽい。

しまお でも、昼にちょっと寝ちゃいます。机の上とかで。

─ 結局寝てるのか。

しまお そう。机に突っ伏して寝ちゃいます。それはもう、どこでも一緒。人前っていうか、いろんな人がいるところでも寝ちゃう。

─ 外で寝る時に机に突っ伏すのはわかるんですけど、なんで家でもその恰好なんですか? 横になればいいじゃないですか。

しまお うーん。でも、「起きてなきゃいけない」っていう気持ちはあるんですよ。「やってます。とりあえずパソコンの前にいます」っていうのは形として……。

─ キープしたい?

しまお そう。寝てしまったらもう、無理。そこでおしまいな感じがしちゃうから。でも、結局寝てるんですよね。

─ 結局寝てますよね。

しまお うん。でもそれ、昔から変わらないです。中学生とかの時にも受験勉強で図書館に行って、やっぱり行ってまず寝てましたもん。

─ 着いて、まず。

しまお うん。ついでに言うと、お弁当とかお菓子を持っていると、それを全部食べ終わんないと落ち着かないんですよ。だからお腹が空いてなくても最初に全部食べちゃうの。

─ へー! 変な人!

しまお ご飯もまんべんなく食べられないんですよ。おかずがたくさんあっても1個ずつ片付けていっちゃうタイプ。だから、スパゲッティとかどんぶりが最高ですね。

─ 男の粗野な食生活の代名詞と言われるどんぶりですよ。

しまお どんぶり大好きです。そう、だからやっぱり、これは1日のスケジュールも、全部寄せたいんだと。

─ 寄せたいとは。

しまお お風呂に入ってそのあとになにか遊びタイムがある。で、その後に就寝っていうのが、なんか散漫な感じがして。お風呂と寝るっていうをできるかぎりくっつけたいんです。

─ 湯上がりからすぐ寝るのには、精神的な理由も大きいんですね。

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加齢と睡眠

─ 個人的には、お風呂に入ってから寝る人ってすごくちゃんとしてる人っていうイメージがあります。

しまお わかりますわかります。

─ わかります? っていうことはつまり、しまおさんは「ちゃんとしたことをしている自分」っていう意識がある?

しまお 意識はあります。

─ いいですね。

しまお そう。昨日もお風呂入って寝たもんね。ちゃんと頭を乾かして。まあ、すっごい面倒くさいですけど。でもやっぱり寝ることにベストを尽くしたいんで。

─ やっぱりかなりの睡眠大切派ですね。

しまお 最重要派です。

─ すごい。

しまお でも、朝早く起きてなにかをやろうっていうことが絶対にできない。

─ 残念。基本的にはいま、だいたい何時ぐらいに起きますか?

しまお まず、寝るのが早いですよ。11時ぐらいには寝ているかな? で、9時半とかに起きてますね。

─ そこそこ長えな。もともとそこそこ長い派ですか?

しまお そこそこ長いです。毎日10時間前後はいきたい感じなんですよ。そこからさらに昼寝とかもできるんで。

─ おかわりも全然いけちゃう?

しまお うん。全然できる。

─ へー! 歳とってこれ、変わるかどうかですね。しまおさん、結構、睡眠時間は変わりますよ。

しまお 変わります?

─ 変わります。僕も昔は10時間は欲しかったですけど、もう10は無理。5、6時間とかで脳が冴えるか、身体が冴えるかどっちかしちゃうから。

しまお ふーん!

─ あと、それこそ30代半ばまでは絶対に朝起きれなかったんですよ。それでフリーになったようなもんだったのに、子供が生まれて、なおかつ引っ越したら、全然朝起きられるようになっちゃった。今までの人生はなんだったんだっていう。

しまお それは引っ越し先の陽当たりがいいとか?

─ それもあります。

しまお うちも陽当たりがすっごいいいところに引っ越して、そしたら急に朝型になりましたね。

─ 子供が先か引っ越しが先か、自分でもどっちかはわからないんですけど。

しまお 私ね、引っ越しが先だと思う(きっぱり)。子供も朝寝坊だったんですよ。1階に住んでいた時は。暗くて、もうみんなで12時とかそのぐらいまで寝ていたんだけど、6階に引っ越してからは結構みんなばっちり起きます。

─ っていうことは単純にやっぱり陽当たり問題?

しまお うん。陽当たりはかなり大きいと思いますね(きっぱり)。 

─ でも、子供の頃の家もそんなに陽当たり悪くなかったはずなんだけどなぁ……。

しまお うーん、そっかぁ。

─ しまおさん、やっぱり加齢の可能性もありますよ。

しまお ええ~? うーん、でも確かに子供の方が寝ているもんな。

子どもと睡眠

─ お子さんはいま、1才とどのくらい?

しまお 1才と、今月で8ヶ月かな? 

─ まだ全然一緒に寝れますよね。

しまお うん。子供はすごい気持ちよさそうに寝てるもんなー。でも、なんであんな寝る前に泣くんだろう?とは思いますけどね。泣くというか、暴力的になるっていうか。機嫌がすごく悪くなる。

─ ああ、子供ってそうですよね。

しまお 「すんなり寝りゃあいいじゃん」って思うけど。

─ 「すんなり寝りゃあいいじゃん」。

しまお なにかに抗っているっていうか。

─ 確かに。うちも、急にモノを投げ始めたりして、「おまえ眠いんだな?」って言うと「眠くない!」ってまたキレて。その後にスパーンって寝たりするから、ねえ。寝るともう全然起きないんだけどな。いまは完全にお子さんと寝てる感じ?

しまお そうですそうです。子供がお風呂に入ったあとにあまり寝なかったら、私が先に寝ちゃって、あとから子供が布団に入ってくる感じ。

─ へぇ! それはいいですね。

しまお 親が先に寝るパターンも結構ありますね、うちは。力尽きて。でも、そうすると結構大暴れしていて。朝起きると顔の横にフライパンがあったり、納豆がビョーン!って出ていたりとか。そういうことはある。

─ すごいな! そんななんだ。

しまお そんなですね。なんか大暴れっていうか、引き出しとか普段ダメだよって言われてるところも、寝ている隙にいろいろ開けて出したりしている。

─ あはは。うちは次女の方がどうやら寝るのが好きみたいで、眠くなってくると突然スッと立って、敷きっぱなしの布団までテテテテテッて走ってバーン!って寝たりする。充電の切れたルンバがコンセントのところに帰っていく感じっぽくて、かわいいですよ。

しまお かわいい~。


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スイマちゃん

ちゃんとしているところと、そうでないところと

─ 枕とか寝具はこだわる方ですか?

しまお 枕はしないです。いまは枕していない。

─ 枕なし?

しまお 枕なしです。

─ 枕にかわるなにかもなし?

しまお なしです。ただ私、脱いだ服を布団の横に積んであるんですけど、枕なしで寝ても、朝起きるとその積んだ服をクシャクシャって枕にして寝ているから……。

─ 枕、いるんじゃん。

しまお そう。深層心理では枕を求めているのかもしれないとは思う。

─ 深層心理って言わないよそれ。

しまお や、なんかね。やっぱりこだわらなきゃいけないかな?って思っていくつか試したんだけど、あんまり上手くいかなくて。かえって肩がこっちゃったりしたから、それだったらない方がいいわって。

─ でも、起きたら枕的なものはやっぱり欲しているという。

しまお 欲しているみたいだね。

─ バスタオルとか、いいんじゃないですか? たまにいますよね。バスタオルを三つ折りぐらいにして枕にしている人って。

しまお うん。シーツを敷いてその上に、ちょっとでっかいバスタオルを敷いてはいるんですけど。で、それだけ汚れたら替える。

─ こんもり感は若干、身体が欲しているんじゃないですか?

しまお 欲しているかもしれないですね。脱いだ服をギュッと自分で盛って、首の後ろに入れてるから。だから起きると、ジーンズとかをこう枕にしていて……

─ せっかく「しまおさんは意外とちゃんとしている」って言ってたのに、そこはちゃんとしていなかった。

しまお ちゃんとしていない。子供の服とか、自分で知らぬ間に入れているから。やっぱり、うん。しかも全然覚えてない。

─ まぁでも、熟睡できてるっちゃ熟睡できてるんですね。ならいいのか。

しまお でも、最近子供が寝ている間にお乳をまさぐって、そのまま寝ちゃったりするんですよ。そうすると、あごの下、喉元にぐっと肘を入れて寝ているときがあって。それで最近、えずいたり吐いたりする夢をよく見るんだけど、そういう時は大抵、子供の肘が喉元に入っていて……すごい不思議ですよね。なんか、目覚ましとかラジオが鳴っていると、それが夢に出てきたりするじゃないですか? でも、その前にもストーリーがあるじゃないですか。

─ ?

しまお なんか音が鳴ってるとかえずいたり吐いたりするのにも夢の中でストーリーがあるんだけど、でも実際には腕が入ってるのが先で……。

─ 刺激が先のはずなのに、夢のストーリーとしてはなぜか辻褄が合ってる?

しまお そう! それがすごい不思議。たまたま昨日もえずいた夢を見たんだけど、それもカップラーメンかなんかを作っていて、カップラーメンを食べ終わった後にそのカップに「オエッ!」ってやった夢だったんですよ。

─ なにそれ。

しまお で、ハッ!て起きて。「私、なんか具合が悪いのかな?」って思ったら、思いっきり喉元に肘が入っていたっていう。

─ 予想ですけど、それは単に夢だからわりと突拍子もないストーリーをすんなり受け入れているだけかもしれませんよ。

しまお うーん、そうかなぁ……。

─ カップ麺にいきなり吐くのって、言うほどそんなに自然なストーリーじゃないですよ。あと、辻褄が合っているような夢を見ていたと、あとから無意識的に記憶を組みかえているのかもしれない。

しまお そうなんですかねぇ……(不服そう)。なんか「辻褄が合っているよな、これ」っていつも思いますよ?

─ 知らないですよ。(以下、雑談になってうやむやに終了)

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このように、ちゃんとしてるんだかしてないんだかよくわからないしまおまほさん。寝ることに対して実に前向きで、ほとんど気概のようなものさえ感じさせるのが、さすがでした。

「入眠の儀」には様々なタイプがあって、たとえば一日の締めくくりとしてささやかな自由時間(肉体的自由と精神的自由の両方)を愉しむ人、できるかぎり眠りを遠ざけて今日の終わりを拒む人などがいるのですが、しまおさんはさしずめ「明日への備え」として睡眠を最上級に尊ぶタイプ。こうした人たちにとって入眠の儀は、より良き明日への序奏として、真に神聖な儀式となっていることが多いのです。

しまおさんが持つオープンな好奇心や人なつっこさは、こうした入眠の儀と無縁ではないのでしょうね、きっと。

しまおまほさんへの入眠調査 前編はこちら

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あなたの入眠、大募集

入眠調査室では、あなたが眠る時にしている「ちょっと変わってるかもしれない儀式」を必要以上に細かく聞き取り調査していきます。「あなたの眠り方」「眠る直前に考えていること」「寝るときの服装や持ち物」など、できるだけ細かく具体的に書いて、応募フォームから送って下さい。調査員から調査依頼が届くかもしれません。よろしくお願いします。


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古川 耕
1973年生まれ。フリーライター、放送作家。「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」「ジェーン・スー 生活は踊る」(共にTBSラジオ)などの構成を担当。アニメーションやコミック、HIPHOP、文房具について執筆。年に一度のボールペン人気投票「OKB48選抜総選挙」主宰。人が眠りにつく過程を必要以上に細かく聞き取っていく「入眠調査」を密かな趣味とする。詩人でデザイナーの小林大吾と制作ユニット「四〇四号室」を主宰。
「四〇四号室」 

ロゴ&イラストレーション:小林大吾

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寝ることにベストを尽くす!

更新日:2016年12月29日 書いた人:古川耕

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