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谷川俊太郎 さんに聞いてみた

詩人をはじめ、翻訳家、絵本作家、脚本家など、言葉の世界の第一線でマルチな活躍を続けるスーパースター、谷川俊太郎さん。

そんな谷川さんは、エッセイで「眠るってのは、人生のいろんな快楽のうちでも最大のもののひとつだろうな。」と綴られています。

また、『朝のリレー』、『朝』など朝をテーマにした作品も多く、『あさ/朝』(*1)という詩集×写真集も出版されています。

そして、80歳を越えた今でも新しいジャンルに挑戦し、創作活動への意欲は衰えることを知りません。そのバイタリティーはどこにあるのでしょうか?

そこで世界睡眠会議は、谷川俊太郎さんに眠りや健康法、そして創作の秘密についてお話を伺いました。


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流れに身を任せて、活動の場を広げてきた

― 現在、静岡県三島市の大岡信ことば館で、『谷川俊太郎展・本当の事を云おうか・』(*2)が開催されていますね。

谷川 おもに詩人・評論家の大岡信さんと私の関係に焦点が当たっていますけど、私の写真をはじめ、少年時代に夢中になった模型飛行機や、その後のラジオコレクションの一部などを紹介しています。会場では、いくつかの詩を私自身の朗読(録音)によって聞くこともできます。

― iPhoneアプリ「谷川」(*3)などで、さらに活動の場が広がっていますね。

谷川 アプリ「谷川」はウケてるみたいですね。私のアイデアじゃないんですけど(笑)。

もともと私は流れに身を任せているだけなんです。現代詩っていうのは孤立しがちで、詩だけでは全然食えませんでした。でも、若い頃から多くの人に自分の作品に触れてほしいという気持ちが強かったものですから、どんなメディアでも仕事のオファーがあったら、私ができることであれば全部受けてきました。そうやって活動の場を広げてきて、いまはインターネットなどの新しいメディアがあるので、その時流に乗っているということですね。


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昼寝はおおらかだ!

「昼寝」とはまたなんと快い言葉だろう。「朝寝」という言葉も捨てがたいが、どこかふてくされたような響きがある、言葉自体が少々萎縮しているきらいがある。それに比べると「昼寝」はおおらかだ。時と場合によってはそのまま夜にずれこんでいってもいいというような、ノンシャランなところがなんとも言えない。
谷川俊太郎『ひとり暮らし』(新潮文庫)より

― 谷川さんはエッセイ『ひとり暮らし』で、“昼寝はおおらかだ”と綴られていましたね?

谷川 ある程度、年をとったら昼寝をするようになりましたね。その昼寝で父(*4)のことを思い出します。父は90代に近づくと、いつも椅子に座ってウトウトしていたんです。自分も同じだなと思って…。

― いまも昼寝は日課なのでしょうか?

谷川 今はもう昼寝という意識はなくて、いつのまにか眠っている…。僕は本当に眠れる人間なんですよ。すごく恵まれていると思います。

― 現在の谷川さんの一日のタイムスケジュールを教えてください。

谷川 夜12時から1時くらいに眠って、朝は7時〜8時の間に起きます。毎日、6時間は眠っていますね。

― 年を重ねることによって睡眠に変化はありましたか?

谷川 若い頃は8時間寝ないと、寝不足で疲れが取れないということがありました。でも、いまは6時間程度でちょうどいい感じです。確かに若い頃より睡眠時間は短くなりましたね。

― 寝るときの日課、「ねむルーティン」はありますか?

谷川 これが、何をする間もなく寝ちゃう!絵に描いたようにバタンキューなんです(笑)。習慣まではいきませんが、音楽を1時間ほどタイマーで設定して、聴きながら寝ることはありますね。

― どんな曲を聴きながら寝るのでしょう?

谷川 クラシックが多いですね。バッハやモーツアルト。ベートーベンは寝るときには聴きません(笑)。英国19世紀のエルガーも好きなので聴くときがありますね。

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目覚めに言葉が浮かぶ!谷川俊太郎の創作秘話

『朝のリレー』
谷川俊太郎

カムチャッカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女がほほえみながら
寝返りをうつとき
ローマの少年は柱頭を染める
朝陽にウインクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ
緯度から 緯度へと
そうしていわば交替で地球を守る

眠る前のひととき 耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受け止めた証拠なのだ

『あさ/朝』 谷川俊太郎/詩  吉村和敏/写真 アリス館 より

― この『朝のリレー』は、どういう発想で生まれたのでしょう?

谷川 昔なのでハッキリしないのですが、地球儀を見ながら書いたことは覚えていますね。地球の朝と夜は、どうなっているのだろうかと考えていたんだと思います。それで机の上の地球儀を見て、カムチャッカやニューヨークなどの緯度や経度を間違えちゃいけないと思って確認したんです。

― この作品は、谷川さんが世界を旅して書かれたのかなと思いました。

谷川 世界一周をしたことはないですね。今でも注文生産なので雑誌からの依頼で書いたのだと思います。どんな雑誌か覚えてないですけど(笑)。

― 『朝のリレー』をはじめ、谷川さんは「朝」をテーマにした詩が多いですけど、目覚めはどうでしょうか?

谷川 まぁ、とても気持ちよく目覚めるっていうのは、年をとってからないですけど。それに目覚めて寝床でグズグズしているときに、言葉が浮かんでくることも多くあって、それが詩のきっかけになることが増えましたね。そういう言葉をメモするために起き上がるのかな。

― ちょっと、うつろな感じの時に言葉が浮かんでくるのでしょうか?

谷川 意識が覚醒していないものですから、ちょっと変な言葉が浮かんでくるんですね。起きているときの論理的な言葉ではない。でもそれって、詩の言葉に近いんですよ。そんなときの発想は感情の奥底にあるものが出てくので、詩の言葉に似ているんだと思います。

― 夢からインスピレーションを受けて言葉にすることもあるのですか?

谷川 最近は夢を見なくなりましたね。もしかすると夢は見ているかもしれないけど、忘れているんですよ(笑)。

― 谷川さんはMacのノートパソコンで創作されているそうですが、寝起きに浮かんだ言葉をもすぐに打ち込むのですか?

谷川 朝はMacは開けないで、その辺の紙切れに書いたりします。“起きちゃおう”ってなったら開きますけど、ちょっとメモしたら、また寝たいわけですよ(笑)。


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谷川俊太郎が実践する健康法とは?

― 谷川さんが睡眠とともに日課にしている健康法を教えてください。

谷川 呼吸法ですね。呼吸法っていっても、ただ息吸ったり吐いたりして、それに体の動きを合わせてるだけです。週に一回、呼吸法の加藤俊朗先生(*5)に来てもらって実践しています。まぁレッスンもありますが、半分はおしゃべりをしていますけどね(笑)。

― 毎朝、呼吸法を実践する習慣もあるのでしょうか?

谷川 30分ぐらいですけど呼吸法を実践して、体を動かしたりはしますね。朝は体が強張っているんですよね。だからほぐさないと気持ち悪いんです。もう20年くらい前からかな?癖になっていますね、朝から体を動かすのは。

― 食事はいかがでしょうか?

谷川 私は一日一食で、夕食しか食べません。朝は新聞を読みながら野菜ジ
ュースを飲むだけですね。

― 一日一食の夕食は、好きなものを食べるのでしょうか?

谷川 そうなんですけど、ちっとも美食じゃありません。むしろ粗食というか、玄米食みたいな食事がいちばん体に合っていますね。フランス料理なんかは、もういいよみたいな…そんな感じになってきました。

― それは大体何歳くらいからそうなってきたのでしょうか?

谷川 やはり60越えて70の前くらいかな。それ以前からも、魚や肉を食べたいという欲求はそれほどなかったですね。海外から帰国すると、すぐに寿司屋に行く方がいますよね? 私はすぐに蕎麦屋に行く派なんです。蕎麦はよく食べますね。


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深く考えない!ストレスフリーで生きること

― お話を伺うと、谷川さんは睡眠の達人感がありますね。

谷川 そんなことないと思うんですけど。体質じゃないでしょうか(笑)。できるだけストレスがないように生きてきたということですね。

― 眠りの達人、谷川さんから眠れない方へのメッセージをお願いします。

谷川 生意気なことは言えませんよ、怖くて(笑)。ただ自分の経験から言わせていただくと、”深く考えない”ってことじゃないでしょうか。

例えば、夏目漱石みたいな人は不眠症になる傾向が強いと思うんです。あの人は物事をものすごく深く考えちゃう人でしょ? だから私は不眠症の人は尊敬しているんですよ。とても人間が深いと思うんです。逆に深く考えないタイプは、小説家には向いていません。

― 谷川さんは、あえて深く考えないようにしているのでしょうか?

谷川 自然にそうなっちゃいますね。あえてそうしているのではなく、性格だと思います。私は生まれつき、詩には向いているけど小説には向いていないんですね(笑)。

― 最後にメッセージをお願いします。

谷川 じゃぁ、あっちの部屋で書いてきますね。

待つこと10分程度、谷川さんの詩のメッセージが完成しました。


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ふとんのうみの
なみのそこ
ゆめのてれびが
ひかってる
ねんねんころり
ねんころり

― きょうは、貴重なお話どうもありがとうございました。

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*1: 『あさ/朝』 谷川俊太郎/詩 吉村和敏/写真 アリス館
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*2: 大岡信ことば館「谷川俊太郎展・本当の事を云おうか・」(2016年12月25日まで)

*3: iPhoneアプリ「谷川」

*4:父・谷川徹三
谷川徹三(たにかわ てつぞう) 哲学者。法政大学総長などを務めた。ジンメル、カントの翻訳や、文芸、美術、宗教、思想などの幅広い評論活動を行った。詩人の谷川俊太郎は長男。林達夫、三木清とは同期の友人。1989年、94歳で亡くなった。

*5:加藤俊朗先生
加藤俊朗(かとう としろう) 1946年、広島生まれ。国際フェルデンクライス連盟認定公認講師。厚生労働省認定ヘルスケア・トレーナー。産業カウンセラー。日本を代表する詩人の谷川俊太郎氏に10年以上にわたり呼吸を指導している。 http://katotoshiro.com/

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スイも谷川さんみたいな詩人になりたいぐぅ

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谷川俊太郎 
たにかわ しゅんたろう

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1931年東京生まれ。詩人。
1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。 1962年「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詞賞、 1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、 1982年『日々の地図』で第34回読売文学賞、 1993年『世間知ラズ』で第1回萩原朔太郎賞、 2010年『トロムソコラージュ』で第1回鮎川信夫賞など、受賞・著書多数。
詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表。
近年では、詩を釣るiPhoneアプリ『谷川』や、 郵便で詩を送る『ポエメール』など、 詩の可能性を広げる新たな試みにも挑戦している。

谷川俊太郎.com

更新日:2016年12月12日 書いた人:峯一雄

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