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京都大学百周年記念ホールで4月24日(日)に開催される「世界睡眠会議 ウェルカム・シンポジウム」でコーディネーターを務めていただく評論家の山田五郎さん。そのスーパー好事家ぶりはお馴染みですが、「睡眠」に関しても独自の視点をお持ちです。今回は、山田さんの眠りに対するこだわりと、アカデミックなテーマの「睡眠と文明の関係」について伺いました。

寝不足の原因は、ニッポンが明るすぎるから? 光と睡眠の関係

―日本人の睡眠時間は世界的に短く、多くの人が寝不足になっていると言われていますが、いかがでしょう?

山田:働きすぎというよりも、むしろ娯楽が多すぎることが原因じゃないかと思います。日本ほど24時間、年中無休であらゆる娯楽が手に入る国も珍しいですからね。お店や家庭の照明に寒色系が多いのと、明るすぎることも一因かも。さらに、交通やIT環境などが発達していて、体を動かす機会が少ないせいもあるかもしれません。

その証拠に、自然が豊かなキャンプ地や温泉に行くと、たいがいの人はよく眠れたと言いますよね。娯楽がなくて夜が暗く、昼に山歩きとかして疲れていれば、嫌でも熟睡しちゃいますよ。ストレスとかメンタルな要因以外にも、そういう物理的な環境が、日本人を寝不足にしているのではないでしょうか。

―不眠の原因のひとつが、夜に光を浴びることだという指摘もありますね?

山田:光の種類も関係があるような気がします。いまはLEDの時代ですが、電気がなく火が灯りだった時代、白熱灯の時代、蛍光灯の時代と、照明の違いは気づかぬうちに人々の暮らしや文化も変えてきたんじゃないかと思うんです。

編集者時代に色校正をやるたびに実感してきたことですが、照明ひとつで物の見え方や感じ方ががらりと変わりますからね。睡眠にも影響があるはずです。「照明と睡眠の関係」は、重要なポイントかもしれませんよ。

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自分にあった寝具をみつければ、良い眠りが得られるはず!
でもベッドって、ファッション雑誌向きじゃないんです。

―山田さんは眠ることに関しても、相当こだわりをお持ちだとか?

山田:ベッドをはじめ寝具にはお金を惜しみません(笑)。いまは新素材などを駆使した素晴らしい製品がたくさん出ています。残念なのは、その機能や快適さが写真には写らないこと。だから雑誌などで「快眠グッズ」を特集すると、どうしてもアロマランプみたいな絵になる周辺小物ばかりが紹介されがちです。でも、本気で快眠を求めるなら、いちばんこだわるべきはベッドでしょう。次に布団とシーツと枕。あとは個人的に、遮光カーテンと空気清浄機。暗さと静けさときれいな空気、そしていい寝具があれば、他に何も要りません。

―寝具に関して、いろいろ試されたんですか?

山田:向き不向きや好みがありますからね。たとえば僕の場合、掛け布団はある程度の重さが欲しいとか、夏場に使う冷感パッドはゲルタイプよりアウトラストのほうが好みだとか。いちばん多く試したのは枕です。高価なハイテク枕も使ってみましたが、いまはネット通販で安く買える「イタリアの病院で使われている枕」ってやつに落ち着いています。

こと寝具に関しては、それだけの時間とお金をかけても自分にいちばん合う物を探す価値があると思っています。だって、1日の3分の1近くもの時間を共にするわけですからね。

―パジャマはどうでしょう?

山田:一時期、大いに凝りました。やはりいいパジャマは寝心地が違いますよね。でも、家で洗濯をすると着心地が保てなかったりするのが悔しくて。いろいろ試行錯誤した結果、いまは普通のジャージで寝ています(笑)。

ただ、最近は、いいパジャマが置いてあるホテルや旅館が増えてきましたよね。そういうところは枕も2~3種類用意してくれていたりします。たまに出張でそういうホテルに泊まっていいパジャマで寝ると、買って帰りたくなるので困ります。

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眠れないときは、洋書を読めばいい!

―入眠法に関して、山田さんとみうらじゅんさんには共通点があるそうですね?

山田:二人とも、なぜか落語を聞くとよく眠れるんです。ただし、みうらさんは3代目桂米朝はじめ上方落語、僕は5代目古今亭志ん生の江戸落語という違いがありますけど。志ん生なんて、ダミ声で騒々しくて落ち着いて寝られやしないはずなのに、なぜかすーっと眠りに入れるんですよ。

―その他に入眠法はありますか?

山田:個人的には、洋書を読むことですね。眠れないときに頑張って寝ようとしても、ますます眠れなくなるだけです。だったら、逆に「寝てはいけないのに寝てしまう」ことをすればいい(笑)。僕の場合は、それが洋書なんです。

特にいいのは、ドイツ語の本。ドイツ語はひとつの文章を長く続けられる上に複文だと動詞が最後に来るので、どうなったのかがわからないまま読み進まなくてはなりません。これが苦痛かつ退屈で、気がついたら眠りに逃避してる。いつも数行で寝てしまうので、一冊あれば何年も使えて経済的です(笑)。

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文明とは眠らないことである。

―今回のシンポジウムでは、山田さんにも「睡眠文化」に関してプレゼンをしていただくのですが、どんなお話になるのでしょう?

山田:僕は近代社会というのは基本的に人を眠らせないように出来ているんじゃないかと思うんですよ。「文明とは眠らないこと」だと言ってもいい。その証拠に、IT化が進んで余暇が増えても、人々はますます眠らなくなる一方じゃないですか。

―テクノロジーが進歩しているのに、人は眠らなくなる。何故でしょう?

山田:人々がテクノロジーを進化させるのも、眠らなくなるのも、理由は同じ。近代資本主義社会の根底に、禁欲主義があるからだと思います。

人は今日が幸せなら、明日も同じであればいいとしか望まないのが自然です。ところが、対前年比アップを求める資本主義社会では、明日は今日よりよくなり続けないといけない。だからIT化で余暇が増えても、その時間は睡眠ではなく、さらなる生産や消費に回されてしまうんです。

ドイツの社会学者マックス・ヴェーバー【註1】は、近代資本主義の根底にはプロテスタントの「世俗内禁欲」【註2】があると指摘しました。プロテスタントか何かはともかく、今の社会の根底に「睡眠=怠惰」とみなす禁欲的な価値観が潜んでいることは確かでしょう。快適で健全な睡眠を取り戻すには、そこから変えていかなければならないのではないかと思っています。

―「ヘンタイ美術館」【註3】などの著書をお持ちの山田さん。西洋美術で「眠り」は、どう扱われてきたのでしょう?

山田:プロテスタントであれカトリックであれ、キリスト教は基本的に禁欲的な宗教なので、西洋の古典絵画における「眠り」は、あまりいい意味で描かれてはいませんね。フュースリの『夢魔』やゴヤの版画『理性の眠りは怪物を生む』のように、タイトルからして「眠り」を悪者にしている作品も少なくありません。その辺は、機会があればシンポジウムでもお話しします。

―とても楽しみです。最後に、世界睡眠会議ウェルカム・シンポジウムへのメッセージをお願いします。

山田五郎さんコーディネートのシンポジウム「世界睡眠会議ウェルカム・シンポジウム 眠りの面白さに目覚めませんか?」。みうらじゅんさんの特別授業「眠い話」(仮)も行われます。当日はYouTubeライブもありますよ。4月24日(日)13:30から。お見逃しなく!

詳細はこちらから

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評論家 山田五郎
1958年 東京都生まれ。上智大学文学部在学中にオーストリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し、西洋美術史を学ぶ。卒業後、㈱講談社に入社『Hot-Dog PRESS』編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。現在は時計、西洋美術、街づくり、など幅広い分野で講演、執筆活動を続けている。

suichanmark01マックス・ヴェーバーの原書を読めばもっとぐぅだよ〜。

【註1】マックス・ヴェーバー
ドイツ社会学者 Max Weber (1864-1920)。代表作「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1905)で、「全ての仕事は神から与えられた天職だから禁欲的に働くべきであり、結果として得られる利益は肯定される」というプロテスタントの倫理が近代資本主義の成立に大きく貢献したと主張した。

【註2】世俗内禁欲
出家した僧侶や修道士の修業だけでなく、俗世の仕事も神から与えられた使命と考え禁欲的に働くこと。この世俗内禁欲が、永遠に対前年比アップを求める資本主義の原動力となったと、ヴェーバーは主張する。

【註3】「ヘンタイ美術館」山田五郎 こやま淳子 著(ダイヤモンド社)
評論家・山田五郎さんを館長に見立てた架空の美術館。美術に興味はあるけれどどこから入っていいのかわからない、という方々に向けた、西洋美術の超入門書。

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更新日:2016年4月9日 書いた人:世界睡眠会議編集部

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