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世界には、心地よく眠りへ誘う、素晴らしい音楽がたくさんあります。
そんなDreamtime Songs~世界の眠族音楽をブロードキャスターのピーター・バラカンさんがセレクトします。

今回、ピーター・バラカンさんが紹介してくれるDreamtime Songは…

ボビー・チャールズの
「I Must Be in a Good Place Now」

ピーター・バラカンさんが語るDreamtime Song
「I Must Be in a Good Place Now」

ピーター・バラカンさんが第2回のDreamtime Songに選んだのは、ボビー・チャールズの「I Must Be in a Good Place Now」。

この曲が収められているアルバム『BOBBY CHARLES』(1972)も全体がゆったりした作品に仕上がっていて、“寝るか寝ないかは別にして、ゆったり過ごしたい時には完璧なレコード”だとおっしゃっていました。

第2回でご紹介していただいたピンク・フロイドの「グランチェスターの牧場」に通じる牧歌的なテイストの歌で、まさに心地よい眠りを誘ってくれるDreamtime Songです。

今回、バラカンさんには、ボビー・チャールズについての貴重なエピソードを語っていただきました。

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― バラカンさん、ボビー・チャールズとの出会いを教えてください。
 
バラカン 20代のはじめ頃、たまたまラジオで聴きました。当時、ロンドンで、アメリカのルーツ・ミュージックが好きなラジオDJが日曜昼の番組を担当し、ボビー・チャールズの曲をかけていたのです。それまでまったく知らないミュージシャンでしたけど、そのサウンドに魅了されました。すぐに輸入レコードショップに行って、アルバム『BOBBY CHARLES』を手に入れました。当時買ったレコードで一生手放せないものが何枚かあるのですが、その中のひとつです。まったく飽きずに40数年聴いていますね。

― ボビー・チャールズは、もともとソングライターとして活躍していたそうですね?

バラカン あとで知ったのですが、彼はビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツが1956年に大ヒットさせた「シー・ユー・レイター、アリゲイター(See you Later, Alligator)」の作者です。シンガーとしてもマディ・ウォーターズやチャック・ベリーが所属していたシカゴのチェス・レコードからデビューするのですが、まったく売れなかったそうです。

― この「I Must Be in a Good Place Now」は、どんな歌詞なのでしょう?

バラカン シチュエーションは、リンゴの花が咲き、蝶々が飛ぶ、自然豊かな丘の上です。そこに彼がいて、夕陽を眺めながら自分の過去と未来、そして彼女のことを夢想するという内容。”蝶々に彼女の名前をつけて、その響きがとても心地いい”というフレーズなどもあります。

まさに、「I Must Be in a Good Place Now(僕はとても素敵な場所にいる)」という感じですね。

ウッドストックとボビー・チャールズ

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今回、バラカンさんは、イギリスの音楽ジャーナリスト、バーニー・ホスキンズが上梓した『SMALL TOWN TALK』(*1)という本を紹介してくれました。

この本は、ウッドストックにあったミュージシャンのコミュニティについてのノンフィクションです。

ちなみに、表紙の写真は、バイクに乗ったボブ・ディランとジョン・セバスチャン。また、タイトルの『SMALL TOWN TALK(=田舎町の噂話)』ですが、ボビー・チャールズのアルバムにも、同名の曲が収められています。

ウッドストックは、アメリカのニューヨーク州アルスター郡の小さな田舎町。ニューヨーク市の北約100マイル(160キロ)の場所にあります。1969年に開催されたウッドストック・フェスティバルが有名ですが、実際にフェスが開かれたのは近郊のベセルという町の農場でした。

このウッドストックは、美しい自然とニューヨークと100マイルの距離ゆえ、昔から芸術家が好んで住んでいました。ミュージシャンがここに多く住むようになったのは60年代中頃からで、この地でポピュラー音楽史に残る名盤・名曲が数多く生み出されたのです。

ちなみに、1966年にオートバイ事故で休養生活を余儀なくされたボブ・ディランがウッドストックでの療養中に、ザ・バンドと共に『地下室(The Basement Tapes)』(発表:1975)を録音しています。

― ボビー・チャールズに関して、この本にはどんなことが綴られているのでしょう?

バラカン ウッドストックにミュージシャンのコミュニティが存在したのは有名な話ですけど、そもそものきっかけは、ボブ・ディランのマネジャーだったアルバート・グロスマン(*2)が、そこに別荘を持っていたことです。

そのコミュニティの中のひとりがボビー・チャールズで、アメリカの南部ルイジアナで生まれ育った彼が、なぜウッドストックに現れたのかが、この本で詳しく綴られています。とてもややこしい話ですけどね。

― どれだけ、ややこしいのでしょう?

バラカン ボビー・チャールズはシンガーとして売れなかった時期、テネシー州ナッシュビルの大きなラジオ局WLACの深夜のDJ、ジョン・Rの下で雇われソングライターとして働いていました。

そこで突然、麻薬関係の事件で逮捕されます。どうやら彼のアパートに友人が麻薬を置いていたことが原因だったようですが、彼は裁判前に逃げてしまうのです。

最初はテクサス州に逃亡していたのですが、ニューヨーク州に安全に過ごせる場所があると訊き、ジェファソンヴィルという小さな田舎町に身を潜めることに。でも、ボビーは、”南部のおっちゃん”という出で立ちだったため、その地域でとても目立っていたのですね。

ある日、コインランドリーで地元のおばちゃんたちの会話を耳に挟みます。それは「この町には州兵がいてくれてよかった」というもの。

それを訊いたボビーは一緒に旅をしていた友人に、この町から離れると告げ、同じニューヨーク州のウッドストックにたどり着くのです。

その地でアパートを探しはじめたボビーは、不動産屋に紹介されて、ある部屋を下見にいきます。実はその部屋に、グレイト・スペックルド・バードというバンドのメンバーだったベイシストとドラマーが住んでいたのです。

二人は引っ越しを検討していた時、ボビー・チャールズがちょうど部屋の内覧にやってきたというわけです。

オーバーオール姿に、ヒゲぼうぼう、南部訛りのボビーは部屋の様子を見て、「君ら、ミュージシャン?」と質問し、名前を訊かれると、「ボビー・チャールズ・ギドリー」と答えましたが、彼の過去のレコードを知っていた2人はすぐに「あのボビー・チャールズか?」と驚いたのです。

ボビーは、「そうだけど、内緒にしてちょうだい」と答えたといいます(笑)。そうやって、ボビー・チャールズはウッドストックに居着くことになるのです。

ウッドストックの名盤『BOBBY CHARLES』誕生秘話

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― アルバム『BOBBY CHARLES』が生まれるきっかけは?

バラカン しばくらくして、ボビー・チャールズは、ウッドストックのコミュニティの中心人物、アルバート・グロスマンに紹介されます。

ボビーがグロスマンに自分の曲を聴かせるために彼の邸宅に行ったとき、居合わせたのがザ・バンドのリック・ダンコ、それにマリア・マルダーです。

そして、リック・ダンコがボビー・チャールズを気に入り、アルバート・グロスマンのベアズヴィル・レコード(*3)からアルバム『BOBBY CHARLES』をリリースすることになるのです。

― アルバム『BOBBY CHARLES』の参加メンバーは?

バラカン プロデューサーはボビー・チャールズ自身とリック・ダンコにジョン・サイモン。バックには、ロビー・ロバートソンを除くザ・バンドのメンバーに加え、テレキャスターの名手エイモス・ギャレット、スチール・ギターのベン・キース、ジェフ・マルダー、ドクター・ジョン、まだ無名だった頃のデイヴィッド・サンボーンなど、ウッドストックと縁の深いミュージシャンがこぞって参加しています。

この『BOBBY CHARLES』は、ウッドストック・サウンドを代表する名盤として語り継がれているのですが、売り上げは芳しくなかった。

でも、日本の音楽好きの間ではボビー・チャールズの人気が高いのです。日本では時代ごとに、このアルバムの再発売が繰り返されていて廃盤になったことがありません。

― バラカンさん、楽しいお話どうもありがとうございました。次回もよろしくお願いします。おやすみなさい。

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スイも、ウッドストックで昼寝がしたいぐぅ。

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ボビー・チャールズ(Bobby Charles)
1938年アメリカ・ルイジアナ州生まれのシンガー・ソングライター。本名はロバート・チャールズ・ギドリー。幼少からケイジャン音楽を聴いて育ち、ローカル・バンドへの参加などを経て、55年にチェス・レコードからデビュー。
「シー・ユー・レイター、アリゲイター」などの楽曲を発表するもヒットに恵まれず、その後レーベルを転々。72年に初のフル・アルバムをリリース。76年のザ・バンドの解散コンサートに参加するなど、ザ・バンドとの交遊でも知られる。80年代以降はマイペースではあるが作品を発表するも、ライヴ活動は疎遠に。2010年1月14日、自宅にて死去。翌月に生前録音したアルバム『タイムレス』を発表。

*1:『SMALL TOWN TALK』(日本未発売)
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『Small Town Talk: Bob Dylan, The Band, Van Morrison, Janis Joplin, Jimi Hendrix and Friends in the Wild Years of Woodstock』 Barney Hoskyns

*2:アルバート・グロスマン(Albert Grossman)
1926年アメリカ・シカゴ生まれ。ボブ・ディラン、ピーター・ポール&マリー、ジャニス・ジョプリンなどを手掛けた伝説的マネジャー。ミュージシャンが創作活動に専念できる環境というコンセプトで、ベアズヴィルという地名をレーベルにまでしたグロスマンは最後までその地を愛し、1986年にイギリスに向かう飛行機のなかで帰らぬ人となった。

*3:ベアズヴィル・レコード(Bearsville Records)
ベアズヴィル・レコードは1970年、ボブ・ディランのマネジャーだった設立者のアルバート・グロスマンが居住していたニューヨーク州アルスター郡のウッドストックで設立された。 当初はアンペックス社へ原盤供給するプロダクションだったが、グロスマンは自宅敷地内にスタジオを建設し、トッド・ラングレンをハウス・プロデューサーとして迎え、レコード会社となる。トッド・ラングレンをはじめ、ボビー・チャールズ、ジェシ・ウィンチェスター、ハングリー・チャック、フォガットなどのアルバムがリリースされた。

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Peter Barakan ピーター・バラカン
1951年ロンドン生まれ。ブロードキャスター。
1980年代から日本のラジオDJ、ブロードキャスターとして古今東西の素晴らしい音楽を紹介。日本の音楽文化を格段に豊かにした功労者のひとりであり、多くの音楽ファンから絶対的な信頼を集めている

book
ロックの英詞を読む 世界を変える歌
ピーター・バラカン著(集英社インターナショナル)

radio
Barakan Beat
「バラカン・ビート」

interFM /Sunday6.00-8.00pm
Weekend Sunshine
「ウィークエンド・サンシャイン」

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「ライフスタイル・ミュージアム」

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tv
Japanology plus
「ジャパノロジー・プラス」

NHKBS(in Japan) Tuesday3.00-3.30am
Offbeat&jazz
「オフビート&ジャズ」

WOWOW/check for dates and times

website 
peter barakan dot net  

撮影協力

自由が丘 ブルーブックスカフェ

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世界の眠族音楽 Vol.1:ピンク・フロイドはこちら

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