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世界には、心地よく眠りへ誘う、素晴らしい音楽がたくさんあります。
そんなDreamtime Songs~世界の眠族音楽をブロードキャスターのピーター・バラカンさんがセレクトします。

ピーター・バラカンさんが第5回のDreamtime Songに選んだのは、ニューヨークはブルックリン出身の兄弟コンビ、サント&ジョニーが1959年に発表した「Sleep Walk」です。

サントが奏でるスティール・ギターが印象的な「Sleep Walk」は、1959年に全米チャートで2週連続1位を記録。以降ロック・インストゥルメンタルの名作として、ヴェンチャーズ、ラリー・カールトン、ジェフ・ベック、ジョナサン・リッチマン、ブライアン・セッツアーなど、数々のギタリストに弾き継がれてきました(ブライアン・セッツアーのヴァージョンは1999年開催の第41回グラミー賞で「Best Pop Instrumental Performance」を受賞)。

そんな「Sleep Walk」の魅力について、バラカンさんのロンドン時代の思い出を交えながら話していただきました。

(取材・文 高橋芳朗)

夏の時期にぴったりの
「Sleep Walk」。

― タイトルはもちろん、曲調的にも睡眠と相性の良い曲ですね。メロウで涼しげで、聴いていると体感温度が少し下がるような気がします。
 
バラカン 涼しいですよね。夏の時期は特にいいと思います。

サント & ジョニーのオリジナルの「Sleep Walk」が生まれたエピソードがおもしろいんですよ。ある夜ライヴが終わったあとに眠れなくなってしまって、ふたりでジャム・セッションを始めたら「Sleep Walk」ができたそうです。ちょっと出来すぎの話ですね(笑)。


Sleep Walkが収録されているサント & ジョニーのアルバム

― 「Sleep Walk」はたくさんのアーティストにカヴァーされている名曲ですが、バラカンさんが初めて聴いたのは?

バラカン クリフ・リチャードのバック・バンドだったシャドウズのLPで聴いたのが最初ですね。彼らが1961年に発表したLP『The Shadows』だから、僕が10歳になるかならないかというとき。たぶん、それが僕が買った初めてのLPだと思います。

ビートルズがデビューする以前にイギリスで人気があったグループは、シャドウズだけですね。ずっとクリフ・リチャードのバック・バンドとしてやっていたんですけど、彼らは彼らで独自にインストゥルメンタルの曲を出していました。「Apache」や「FBI」など、いっぱいヒット曲がありますよ。


Sleep Walkが収録されているシャドウズのアルバム

1961年のイギリス、
シャドウズとビートルズ

― 当時のイギリスにおけるシャドウズの人気はどんなものだったのでしょう?

バラカン 当時の子供たちにとって、シャドウズはすごくかっこいい存在だったんです。ギタリストのハンク・マーヴィンは黒縁の眼鏡をかけていて特にロックスター然とした感じではなかったし、メンバー全員が振り付けしながら演奏するのもダサかった(笑)。でも、それはそれで憧れでしたね。

1996年に『Twang!』というハンク・マーヴィンのトリビュート・アルバムが出ていますが、ニール・ヤング、ブライアン・メイ、リッチー・ブラックモア、ピーター・グリーンなどが参加していました。あの世代のギタリストにとって、ハンク・マーヴィンは憧れの存在だったんだと思います。独特の音色を持ったギタリストでした。

― シャドウズ版の「Sleep Walk」を聴いたときのことは憶えていますか?

バラカン すごくきれいなメロディで大好きな曲でしたが、それ以上のことはなにも考えずに聴いていましたね。しかも、そのあとすぐにビートルズがデビューしてシャドウズはまったく聴かなくなってしまいました(笑)。ビートルズやローリング・ストーンズ、キンクスなどが出てきたことによって、シャドウズは十代の僕にとって過去の音楽になってしまったんです。

それからかなりあと、1980年代になってシャドウズの3枚組のCDを買ってひさしぶりに「Sleep Walk」を聴きました。「Sleep Walk」がシャドウズのオリジナルではないことを知ったのは、もしかしたら80年代に入ってからだったかもしれません。オリジナルのサント & ジョニーのヴァージョンは、ライノから出ていた『Rock Instrumental Classics』というボックス・セットで初めて聴きました。

― バラカンさんが考える「Sleep Walk」の魅力は?

バラカン やっぱりあのメロディですよね。ハワイアンのようなゆったりした感じ。サントはハワイアンを演奏していたことのある先生からスティール・ギターを習ったそうだから、このゆったり感はきっとハワイアンからきてるのでしょう。

でも、メロディは違いますね。シンプルだけど、独特で真似のしようがないものです。こういうオリジナリティのあるメロディをつくれるのは、なによりも成功への近道ですよね。

バラカンさんオススメの
「Sleep Walk」
カヴァー・ヴァージョン

― おすすめの「Sleep Walk」を何曲か教えてください。

バラカン まずは最初に聴いたシャドウズのヴァージョン。全然派手さはないですけどね。オリジナルのサント&ジョニーのシンプルな感じを維持しているんだけど、やっぱりハンク・マーヴィンの独特の音色がすごくいい。

あとは、エイモス・ギャレット* のヴァージョンも最高(1989年発表のアルバム『I Make My Home In My Shoes』収録)。エイモスは職人気質なギタリストで、テレキャスターで上品な音を出す人なんですけど、どこかネジが一本ゆるんでる(笑)。誰も弾かないようなエキセントリックなフレーズが必ず出てくるんですよ。とてもきれいなんだけど、ときどき突拍子もないフレーズが出てくるあたりがエイモスの好きなところです。


Amos Garrett “I Make My Home In My Shoes” Sleepwalkの音源はこちら

― 「Sleep Walk」は日本語に訳すと「夢遊病」の意味になりますが、英語圏で使われるときもそういうニュアンスは含まれているのでしょうか?

バラカン 日本語にすると「病」になってしまうけど、「Sleep Walk」という言葉に病気のニュアンスはありません。

確かに眠っているときに動き出すわけだから変わっているといえばそうなのかもしれませんが、少なくともイギリスでは悪い意味はないです。個人主義の国ですから、普通ではないこと、ちょっと変わっていることに対してとても寛容なんです。むしろ、あのメロディで「Sleep Walk」というタイトルだったらロマンティックなニュアンスが出るかもしれませんね。

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夏の昼寝にぴったりの曲、ありがとうございましたー。

サント & ジョニー Santo & Johnny
1959年結成。アメリカ、ニューヨークのブルックリンで結成されたSanto Farina(スティール・ギター)とJohnny Farina(ギター)の兄弟によるインストゥルメンタル・デュオ。1976年まで活動した。

The Shadows
1950年代から60年台前半にかけてイギリスで活躍したロックバンド。イギリスのロックンロール黎明期の歌手、クリフ・リチャード(Criff Richard)のバックバンドとして1958年に結成される。初期メンバーはハンク・マーヴィン、ブルース・ウェルチら4人。インストゥルメンタル・ナンバーのヒットを量産した。1960年の「Apache」は5週連続チャートトップ、続く「Wonderful Land」は8週連続でチャートトップになった。他にヒット曲は「Dance On」「Foot Tapper」など多数。

* エイモス・ギャレット Amos Garrett
ブルーズを基調としたロック、R&Bなど幅広いジャンルを横断するギタリスト、シンガー。1967年まではカナダで活動し、68年にニューヨーク・ウッドストックに移り、「Great Speckled Bird」を結成(1976年解散)。リチャード・トンプソン、ソロモン・バーグをはじめ、数々のミュージシャンのバックを務める。また、80年の「Go Cat Go」をはじめ、ソロアルバムも多数。テレキャスターがトレードマーク。

おしらせ

今年もピーター・バラカンさん監修の音楽フェスティヴァル Peter Barakan’s LIVE MAGIC 2017が開催されます!
日程:2017年10月21日(土)- 10月22日(日)
会場:恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホール / ザ・ガーデンルーム
詳しくはこちらから!
https://www.livemagic.jp/


Peter Barakan ピーター・バラカン
1951年ロンドン生まれ。ブロードキャスター。
1980年代から日本のラジオDJ、ブロードキャスターとして古今東西の素晴らしい音楽を紹介。日本の音楽文化を格段に豊かにした功労者のひとりであり、多くの音楽ファンから絶対的な信頼を集めている

book
ロックの英詞を読む 世界を変える歌
ピーター・バラカン著(集英社インターナショナル)

radio
Barakan Beat
「バラカン・ビート」

interFM /Sunday6.00-8.00pm
Weekend Sunshine
「ウィークエンド・サンシャイン」

NHK-FM/Saturday7.20-9.00am
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「ライフスタイル・ミュージアム」

TokyoFM/Friday6.30-7.00pm

tv
Japanology plus
「ジャパノロジー・プラス」

NHKBS(in Japan) Tuesday3.00-3.30am
Offbeat&jazz
「オフビート&ジャズ」

WOWOW/check for dates and times

website 
peter barakan dot net


取材・文 高橋芳朗

1969年生まれ。東京都港区出身。タワーレコードのフリーペーパー『bounce』~ヒップホップマガジン『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。エミネム、ジェイ・Z、カニエ・ウェスト、ビースティ・ボーイズらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』と『都市型生活情報ラジオ 興味R』の選曲も手掛けている。

ジェーン・スー 生活は踊る
都市型生活情報ラジオ 興味R
高橋芳朗(Twitter)

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バックナンバー
世界の眠族音楽 Vol.4:リオン・レッドボーン
世界の眠族音楽 Vol.3:チャールズ・ロイド
世界の眠族音楽 Vol.2:ボビー・チャールズ
世界の眠族音楽 Vol.1:ピンク・フロイド

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