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世界には、心地よく眠りへ誘う、素晴らしい音楽がたくさんあります。
そんなDreamtime Songs~世界の眠族音楽をブロードキャスターのピーター・バラカンさんがセレクトします。

ピーター・バラカンさんが第6回のDreamtime Songに選んだのは、ニューヨークを中心にしたバンド、スタッフ(Stuff)が1976年に発表したアルバム「Stuff」から、「Sun Song」です。

当時既に人気・実績のあったスタジオミュージシャンが集まって結成された「Stuff」。様々なジャンルの音楽を組み合わせ、フュージョンともクロスオーバーとも呼ばれた当時としては新しいジャンルの音楽です。この『Sun Song』は、柔らかな曲調に印象的なギターやピアノがのってくる、ひときわリラックスできる一曲です。

そんな『Sun Song』の魅力について、バラカンさんにおききしました。

(取材・文 高橋芳朗)

バラカン家での
愛聴盤「Stuff」は
1976年を象徴するアルバム

ー 今回はスタッフのデビュー・アルバムから「Sun Song」です。

バラカン この前、女房がこのアルバムを家でかけていたんですよ。ちょうど「Sun Song」が流れていて、「Dreamtime Song」の連載にぴったりだと思いました。

そういえば先日、アッコちゃん(矢野顕子)のライブに行ったらスタッフのメンバーだったクリス・パーカーがドラムを叩いていました。スタッフのTシャツを着ていたから「これ、40年前のじゃないよね?」って聞いたら「そうだ」と言っていたけど本当かな(笑)。

ー スタッフのアルバムはご家族で愛聴されているそうで。

バラカン うん、家でよくかけてる。僕も女房も1976年に出たときからずっと好きで、何回聴いたかわからないぐらい。オールタイムベストには入らないかもしれないけど、そういうリストに入ってくるアルバムよりも聴いた回数ではこっちのほうが多いんじゃないかな。これは本当に気持ちのいいレコードですよ。僕にとって、1976年という年を最も象徴しているアルバムかもしれない。


スタッフ『Stuff』

1976年と言われるとすぐに頭に浮かぶ、あの年の夏によく聴いたアルバムが3枚あるんです。ボズ・スキャッグズ『Silk Degrees』、ボブ・マーリィー&ザ・ウェイラーズ『Rastaman Vibration』、そしてジョージ・ベンスン『Breezin’』。あの年の夏休みは九州の友人の家で過ごしたんだけど、その3枚のアルバムをカセットテープに落として毎日車のなかで聴いていました。スタッフのアルバムはまだ夏には出ていなかったと思います。出ていたらぜったいに持っていったはずだから。

ー そのお話からすると発売を心待ちにされていたようですね。

バラカン うん、すぐに買いましたね。スタッフは日本でとりわけ人気があったんです。逆に、アメリカでスタッフのことを知っている人はそんなに多くないと思う。

日本では1974年ごろからアルバムの細かいクレジットを見てレコードを購入する音楽好きが増えてきました。スタッフのこのアルバムは、そういうタイミングで出たこともあってすごく話題になりましたね。

超売れっ子が集まった
セッション・バンド

ー いわゆる「クレジット買い」が音楽ファンのあいだで一般的になってきたころだったんですね。

バラカン そう。コーネル・デュプリーとかスティーヴ・ガッドとかリチャード・ティーとか、スタッフのメンバーでも特にこの3人はニューヨークで制作したレコードによく参加していました。

どのメンバーもすごい売れっ子でたくさんのセッションをこなすから、自分たちが本当にやりたい音楽をやる時間がなかったんです。それで彼らはニューヨークのアップタウンにあった『ミケルズ』というレストランに夜な夜な集まって、毎晩のようにジャム・セッションを繰り広げていたそうです。そういう流れからバンドを組もうという話になって、結成されたのがスタッフですね。

アルバムは『ウッドストック』の主催者だったマイケル・ラングのレーベル、ジャスト・サンシャインから発売されました。このアルバムのちょっと前に出たジョー・コッカーの『Stingray』(1976年)は、バックがデビュー直前のスタッフのメンバーだったんですよ。メンバースタッフのロゴが入ったTシャツを着ていたのが印象的でした。


ジョー・コッカー『Stingray』

ー 特に思い入れの強いメンバーは誰になりますか?

バラカン 案外ソロ・アルバムがいいのはエリック・ゲイルですね。特に1977年にコロムビアから出た『Ginseng Woman』。ボブ・ジェイムズがプロデューサーでややフュージョン寄りの感じなんだけど、これがすごくかっこいいんですよ。

メンバー参加の
印象深い曲は?

ー どのメンバーも数え切れないぐらいたくさんのセッションをこなしていますが、特に印象深い参加作品はなんでしょう?

バラカン コーネル・デュプリーだったらキング・カーティス『Live At Fillmore West』(1971年)、スティーヴ・ガッドだったらポール・サイモン「50 Ways To Leave Your Lover」(1975年)……すぐに思い浮かぶのはそんな感じかな。

あと、クリス・パーカーがメンバーだったポール・バターフィールドのベター・デイズ。1973年に『Better Days』と『It All Comes Back』の2枚のアルバムを出していますが、あのバンドは大好きでした。

ー いまではジャズ・フュージョンの草分けのように位置づけられているアルバムですが、当時の評価はどのようなものだったのでしょう?

バラカン 1976年はちょうどフュージョンがブームになったころで、実際にそのように言われていたのかもしれないけど、僕はちょっと洒落たR&Bのインスト・バンドだと思っていました。コーネル・デュプリーとエリック・ゲイルのギターにしても、かなりブルーズ感覚が強いでしょ? リチャード・ティーのキーボードも完全にゴスペルの雰囲気だしね。

ジャズ・フュージョンといったらもっと薄味な感じだけど、むしろスタッフは濃くてグルーヴがある。ふだんはアルバムでもそういうタイプの曲、ゴスペルっぽいピアノが入った「(Do You) Want Some Of This」みたいな曲を聴くことのほうが多いですね。でも、流して聴いていると「Sun Song」のようなゆったりした曲がいいバランスで入ってくるんですよ。

夜遅くに
一杯ひっかけながら
この曲を聴いていたら、
すぐに寝ちゃうよね(笑)

ー では、その「Sun Song」を今回「Dreamtime Song」として選んだ理由を教えてください。

バラカン 本当にゆったりしていて、夜遅くに一杯ひっかけながらこの曲を聴いていたらすぐに寝ちゃうよね(笑)。そのぐらい気持ちのいい曲。リチャード・ティーにとって、こういうタイプの曲はお手のものですからね。取り立ててこの曲について語れるなにかがあるわけではないんだけど、もうただただ気持ちがいい。

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70年代ニューヨークの風が吹いてくるような一曲。ありがとうございました!

スタッフ Stuff
1976年結成。ニューヨークのスタジオミュージシャンが中心となって結成された六人組のバンド。ゴードン・エドワーズ(b)がリーダー。コーネル・デュプリー(g)、エリック・ゲイル(g)、リチャード・ティー(key)、スティーヴ・ガッド(ds)、クリス・パーカー(ds)。1980年ごろ、個々の演奏活動が多忙になったため、自然に解散状態になるが、1993年にリチャード・ティーが亡くなり、追悼の意味を込めて再結成。アルバムレコーディングも行う。エリック・ゲイルは1994年に死去。コーネル・デュプリーも2011年に亡くなり、Stuffとしての活動は現在のところない。

こちらは高橋芳朗さんオススメ。作者のレオン・トーマスによる歌入りの「Sun Song」です。
(フェロー・サンダーズが1985年に発表したアルバム『Shukuru』収録)


Peter Barakan ピーター・バラカン
1951年ロンドン生まれ。ブロードキャスター。
1980年代から日本のラジオDJ、ブロードキャスターとして古今東西の素晴らしい音楽を紹介。日本の音楽文化を格段に豊かにした功労者のひとりであり、多くの音楽ファンから絶対的な信頼を集めている

book
ロックの英詞を読む 世界を変える歌
ピーター・バラカン著(集英社インターナショナル)

radio
Barakan Beat
「バラカン・ビート」

interFM /Sunday6.00-8.00pm
Weekend Sunshine
「ウィークエンド・サンシャイン」

NHK-FM/Saturday7.20-9.00am
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「ライフスタイル・ミュージアム」

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tv
Japanology plus
「ジャパノロジー・プラス」

NHKBS(in Japan) Tuesday3.00-3.30am
Offbeat&jazz
「オフビート&ジャズ」

WOWOW/check for dates and times

website 
peter barakan dot net


取材・文 高橋芳朗

1969年生まれ。東京都港区出身。タワーレコードのフリーペーパー『bounce』~ヒップホップマガジン『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。エミネム、ジェイ・Z、カニエ・ウェスト、ビースティ・ボーイズらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』と『都市型生活情報ラジオ 興味R』の選曲も手掛けている。

ジェーン・スー 生活は踊る
都市型生活情報ラジオ 興味R
高橋芳朗(Twitter)

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バックナンバー
世界の眠族音楽 Vol.5:サント&ジョニー
世界の眠族音楽 Vol.4:リオン・レッドボーン
世界の眠族音楽 Vol.3:チャールズ・ロイド
世界の眠族音楽 Vol.2:ボビー・チャールズ
世界の眠族音楽 Vol.1:ピンク・フロイド

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