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人気スタイリストとして、雑誌や映画、演劇などで幅広く活躍中の伊賀大介さん。

伊賀さんは筆者が構成作家を務めるTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」のリスナーで、それがご縁で番組に出演してもらって以来、プライベートでもときたま会っては他愛もない世間話を楽しくさせてもらっている。

そんな伊賀さん、ご存知の人も多いと思うが、とにかく大変な読書家である。待ち合わせ場所では常に小脇に本を抱え、挨拶してしばらくすると「アレ読みました?」と尋ねられる。

読んでない。もともとそれほど読んでない筆者は、いつも曖昧に笑って誤魔化す。それでも活字中毒者の話はいつだって楽しいし、伊賀さんのことは大好きだ。

また、伊賀さんのそれほど知られていない一面として、「寝落ちするギリギリまでなにかをし続けている人」というのもある。あなたのまわりにもきっといるこの手の人間が、本と出会うとどうなるか? こういうことになる、というのを白日の下にさらすのが今回のインタビューである。

入眠調査室室長:古川 耕



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入眠調査 FILE:05
ギリギリまでなにかをしている人(前編)

調査対象
伊賀大介」さん

1977年西新宿生まれ。96年よりスタイリスト/フォトグラファーの熊谷隆志に師事後、99年、22才でスタイリストとしての活動開始。雑誌、広告、音楽家、映画、演劇、その他諸々「お呼びとあらば即参上」をモットーに労働。下手の横好きながら、文筆業もこなす。

睡眠問診票

入眠時刻と起床時刻 : 入眠時刻は決まってませんが、だいたいAM1時〜2時くらい? 起床は子供が出来てから6時〜6時半くらいです。
平均睡眠時間 : 5〜6時間?
寝るときの服 : バンドTとか巨人のユニフォームTとかと短パンです。
ベッドor布団 : ベッドで寝ます(いわゆる川の字)
寝るときの部屋の明るさ : 真っ暗にして寝ます。
寝る前に必ずすること : ほんのちょっとだけでも何かしら読んで寝ます。(文庫本でもマンガでも……)
睡眠とは? : 体力回復!(RPGの宿屋的な)

「ギリギリまでなにかをしている人」

古川 この連載で今まで男性がいなかったのと、あと、「寝落ちギリギリまでなにかをしている人の話」をここらでちゃんと記録しておきたいなと思いまして、それで思いついたのが伊賀さんでした。

伊賀 はいはい。

古川 ということでいろいろと聞きたいんですけど……まず、寝る時間は何時ごろですか?

伊賀 問診票にも書いたんですけど、そもそも論として、やっぱり結婚して子供ができてから完全に変わっちゃったんで。(筆者註:2012年に女優の麻生久美子さんと結婚。2012年に第一子、2016年に第二子を出産)

古川 子供ができる前まではどんな感じだったんですか?

伊賀 本当にあれなんですけど……毎日前のめりで死にたいっていうか、ギリギリまでパンパンに溜め込みたいっていうか。だって、ジーパンのまんま寝てましたから。

古川 マジで?

伊賀 週に半分ぐらいは。

古川 週に半分ぐらいは。それは、どこで寝てるの?

伊賀 当時はワンルームみたいな部屋に住んでいて、真ん中に低いベッドがあったんですけど、ほぼそこをソファー代わりにしていて。目の前にテレビもあって。あるじゃないですか? そこから全部手が届く系っていうか。ほぼそこの場所にしかいない、みたいな感じで。だからもう、そうっすね、帰ってきたら歯磨きとかは一応するんですけど、そういうことだけやっておいて、あとはギリギリまで酒を飲みながら、なにか読むか……その頃はたまにゲームもやってたんで、ゲームをやったり。まあでも、ほとんどは本でしたね。

古川 そこから寝落ちをするわけですね。

伊賀 そうですね。そうそう。

古川 結構キテますね。

エイジングとしての部屋着

古川 当時の話をもうちょっと聞きたいんですけど、外に出かけてるじゃないですか。で、家に帰ってくるじゃないですか。そうしたら、そこで1回、いわゆる部屋着的なものにチェンジするんですか?

伊賀 チェンジしますね。

古川 それはもう、全替え? 上下全替えみたいな?

伊賀 そうですね。最近はもうなくなっちゃったんですけど、昔は、次のシーズンに着たい服、いま味を出してる最中の服っていうのがあるじゃないですか。「もうちょっとこのTシャツ、洗いたいな」とか「ジーパン、履き込んでからがいいな」っていう服。それに着替えるんですよ。ジーパンからジーパンに。

古川 ジーパンからジーパンに……エイジングをするってこと?

伊賀 そうですそうです。だから家着がそれになっていて。次に着たいデニムだったりバンドTシャツとか、そういうの。「もうちょっと洗った方がいいな」っていう服に着替えて。

古川 クタらせたい的な?

伊賀 そうそうそう。

古川 普通と逆だ! 普通は新品を着ていて、クタってきたら部屋着に落ちていくじゃないですか。その逆だ。

伊賀 そうですね。

古川 なるほどー……。で、じゃあ、外から帰って部屋着に着替えて、そこから寝るまではどれぐらいの時間が空くんですか?

伊賀 それは次の日の撮影の立て込み具合とか、それまでにどのくらい寝てるかによるんですけど。寝ちゃう時はあっという間、10分20分ぐらいで寝ちゃう時もあるんですけど。でもまず、とりあえず帰ったらビールを飲んで、みたいな生活だったんで。

古川 ああ、まず酒だ。

伊賀 そうです。まず着替えて、ビールですね。

古川 風呂は?

伊賀 風呂は、入ったり入らなかったりみたいな。最近は入りますけども。

古川 朝?

伊賀 いや、夜入る。入れるときは。

古川 入れるときは入るけど、入れないときは入らない。

伊賀 そうっすね。まあ、流れ次第っていうか。

古川 バカな大学生の話を聞いてるみたいだよ!

伊賀 ははは! そうそうそう、でも本当にそういう感じっす。ひとりのときはそんな感じでしたね。でも、ジーパンで寝ているとシーツにデニムの色がつくんですよね。で、シーツを結構替えるじゃないですか、女の人は。そうすると、それがダメだってことになって、ついに短パン時期に突入して。

古川 じゃあ、結婚して、お子さんができて、その過程でだいぶ変わっていったんですね。

伊賀 そうですね。あと、スタイリストが言うのもあれですけど、スパッツみたいなものが世の中に普及してきたじゃないですか。「これは寝るのにいいわ」っていう。だから寝るときは、いまはもう本当、ほとんどそういうスパッツみたいなのを履いて、上はTシャツ。

古川 なるほど。じゃあ、さっき言ったクタらせ的な着方はもうやらなくなったんんですか。

伊賀 Tシャツだけは着ますね。ジーパンはなくなりましたね。



「寝本」、そして「歯磨き本」

古川 一人暮らし時代の話をもう少し聞きたいんですけど、外から家に帰ってきて、クタらせる服に着替えて、酒を飲んで。そこから本を読むんですか?

伊賀 だいたい本かマンガが多かったっすね。まあ、印刷物ですね。

古川 そんなカテゴリーの言い方ないよ。印刷物って。

伊賀 だってそのときはパソコンもそんなに……まあ、一応あったんですけど、オレ全然使えてなかったし。こんなにメールとかなかったじゃないですか。

古川 スマホもまだないからね。

伊賀 まだ全然ガラケーとかだったんで。だから別に携帯を見ることもなく。

古川 テレビは見なかった?

伊賀 あんまり見なかったっすね。映画を見ているときはあったんですけど、ほぼ100%寝落ちするんで。酒を飲みながら見ていたりすると、特に。だからやっぱり本が多かったですね。オレはあと、「歯磨き本」っていうのがあるんですよね。

古川 歯磨き本?

伊賀 やっぱり活字中毒だとは思うんですけど……歯磨きっていま、電動歯ブラシなんで、2、3分ヒマじゃないですか。

古川 まあ、ヒマといえばヒマか。

伊賀 だからその間に読む本。ボーッとしているのもあれなんで。いまだと『おべんとうの時間』とかですかね。『翼の王国』(ANAの機内誌)で連載してる、お弁当の写真が載ってるやつ、あるじゃないですか。

古川 ああ、片面のページがお弁当のアップの写真のやつだ。

伊賀 そうですそうです。あれがちょうど、ひと見開き3分ぐらいで読めるんですよ。

古川 はっはっは!

伊賀 だいたい歯磨き中は何回か読んだ本、しかも3分ぐらいで区切りの付く本を読んでますね。フィクションというより、大きい意味でのノンフィクションばっかりになっちゃうんですけど。誰かの演芸日記みたいなのとか。

古川 演芸日記?

伊賀 たとえば高田文夫先生の本とか。「月曜日は志ん朝を見てすごくよかった」「あのときの談志が」みたいな。日記みたいなのが読みやすいっすね。あと、『ブラスト公論』も最高ですよ(筆者註:筆者やライムスター宇多丸、音楽ジャーナリスト高橋芳朗らによる座談会本)。

古川 ありがとうございます。じゃあ寝る前とか歯磨き中は、テンションをあんまり上げないような本を読んでいるっていうこと?

伊賀 そうですね。面白くっても、それは一度読んだことがあるやつですね。たとえば、こないだの村西とおるみたいなの(『全裸監督 村西とおる伝』)を読んじゃうと、もうビッキビキに頭が冴えまくっちゃうじゃないですか。だから一度は読んだことあるやつですね。

古川 展開も全部わかっている本ということね。

伊賀 そうですね。あとはプロレスのエッセイとか、プロ野球のコラムみたいなのとか。基本的にはノンフィクション。これも同じものを読みます。何回も。今の家は寝る部屋と洗面所が近いんで、歯磨き本と寝るとき本はだいたい一緒になってるんですね。で、定期的に入れ替える。

古川 同じものを読むんだ。読書という行為が半ば儀式化しているような感じなんですね。活字中毒ではあるけど、情報中毒とはちょっと違うのかな。

伊賀 いまはちょっと違うかもしれない。

古川 あ、昔は違った?

伊賀 昔は結構節操なかったかもしれないですね。

古川 それこそ、死ぬまで前のめり系の。

伊賀 そうですね。(情報を)入れながら読んでいたかも。で、寝落ち、みたいなことだったかもしれないです。

古川 すると、いわゆる普通の、寝る前に部屋の電気を消して、布団に入って、暗闇の中でちょっと考え事をしながら眠る、みたいな……。

伊賀 もう全くない。

古川 そういう睡眠ではなかったんですね。要はそれ、毎日気絶してるってことでしょう。

伊賀 そうそうそう。そういう普通の睡眠はオレ、ほとんどないっすね。今はだからせめぎ合いっていうか……家族で川の字で寝てるんですけど、子供を起こさないように一画だけ灯りを点けて、「8ページでいいから読みたい!」みたいな。嫁さんはスマホを見ているんだけど、でもオレはスマホだとなんか盛り上がらなくって。

古川 スマホでKindleを読んだりしないんだ。

伊賀 Kindleでちゃんと読んだことがないんで分からないんですけど、やっぱりなんか、本ですね。

古川 印刷物じゃないと。

伊賀 ははは。そうですね。印刷物。

覚醒から眠りへ。そして本から本へ。

古川 マンガと活字だと、どのぐらいの比率ですか?

伊賀 最近はもう全然活字ですね。マンガはかなり読まなくなっちゃったんで。読むとしても、最近出た『まんが道』のムックとか、あとはエッセイマンガみたいなの、ありますけどね。たまに。

古川 どんなやつ?

伊賀 なんかおもしろ子育てエッセイマンガみたいな。吉田戦車の『まんが親』とか、ああいうのはちょっといいですね。でも、基本的には実録ですね。

古川 寝る本を読むときは、「そろそろ寝ようかな」っていうタイミングで読み始めるんですか?

伊賀 そうですね。リビングで積読本(つんどくぼん)だったり、いま読みたい本を普通に読んで、寝室に行ったら寝るとき用の本に切り替えて……。

古川 ! 寝室には寝室で、寝床で読む用の本があるっていうことなんだ!

伊賀 そうですそうです。けどオレ、風呂ではまったく本を読まないですよ。

古川 ああ、そう? 風呂こそヒマじゃないですか?

伊賀 風呂、オレ、すっごい早いんですよ。カラスの行水で。

古川 本当に大学生と話してるみたいだよ。

伊賀 ククク……。温泉とかに行けばちゃんと入りますけども、普段はなるべく早く出たいんで。

古川 風呂で読書、僕もあんまり得意じゃないです。片手で数えるぐらいしかやったことがない。

伊賀 風呂はもうまったくダメですね。

古川 風呂でみんななにをしてるんだろう?

伊賀 女の人、本当なんでこんな入っているんだろう?

古川 かと言って、スマホとかタブレットを耐水仕様にして持ち込んだりするのも気が進まなくて。「ヒマだなー」って思いながら入ってますね、いまだに。

伊賀 自分のことを差し置くと、風呂の中でスマホを見てる人は、「すげー病気じゃん!」とか思いますよね。「歯磨きしながら本を読んでるのも病気じゃん!」って言われると思うけど。

古川 変わんないよ。全然変わんない。

伊賀 なんかこう、「スマホ中毒だな!」みたいな。「全然変わんねえよ!」っていう。ちなみに、トイレだとなぜかあんまり読まなくて、むしろ仕事のメールとか読んでるかもしれない。

古川 へー。食事中は?

伊賀 マナー違反にならない程度に読んでます。やっぱり中毒ですかね。

(後編へ続く)

伊賀大介さんのお気に入り“入眠本”

おべんとうの時間』阿部了・写真 阿部直美・文 木楽舎 Amazon
毎日が大衆芸能―娯楽・極楽・お道楽』高田文夫・著  中公文庫 Amazon
ブラスト公論』宇多丸・著 シンコーミュージック Amazon
全裸監督 村西とおる伝』本橋信宏・著 太田出版 Amazon
まんが道大解剖三栄書房 Amazon

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古川 耕
1973年生まれ。フリーライター、放送作家。「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」「ジェーン・スー 生活は踊る」(共にTBSラジオ)などの構成を担当。アニメーションやコミック、HIPHOP、文房具について執筆。年に一度のボールペン人気投票「OKB48選抜総選挙」主宰。人が眠りにつく過程を必要以上に細かく聞き取っていく「入眠調査」を密かな趣味とする。詩人でデザイナーの小林大吾と制作ユニット「四〇四号室」を主宰。
「四〇四号室」 

ロゴ&イラストレーション:小林大吾

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本読んで寝落ち、ありすぎる!

更新日:2017年5月9日 書いた人:古川耕



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