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ラジオパーソナリティとして、コラムニストとして、作詞家として、今のジェーン・スーのブレイクを見るにつけ、それ以前の姿を知る身としては、驚き半分納得半分といった気持ちになる。出会ったころの彼女はその3つの顔のどれでもなかったのに、今と同じようにソリッドで馬力があり、野生の猛獣ライクにあちこち飛び出してはぶつかったり転んだりして、それでも勝手に起き上がってはまた新しい地平にスタスタと歩き出すような人だった。

やがていつしか彼女は野生からプロになり、人の営みの複雑さを明快に説き明かすカリスマとなった。持ち前の知性と瞬発力はそのままに、人に寄り添うやさしさを身につけたように見える。

眩しくも誇らしい。そんなことを考えながら、今回初めて彼女に入眠調査をしたところ、まあ、なんていうんでしょうか。

味気ねえ!! 起きてる時間至上主義者。睡眠ヘイター。無味乾燥睡眠。聞けば聞くほど眠りについてドライな人で、なるほど、やはりこれがジェーン・スーかと、これまた驚き半分納得半分な気持ちになるのでした。

入眠調査室室長:古川 耕

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入眠調査 FILE:03
睡眠に対してドライな人

調査対象
ジェーン・スー」さん

(コラムニスト/ラジオパーソナリティー)

コラムニスト/ラジオパーソナリティー/作詞家。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)。TBSラジオ番組『ジェーン・スー 生活は踊る』(月~金11:00~13:00)でパーソナリティーも務める。

睡眠問診票

入眠時刻と起床時刻 : 【入眠】早くて24時 遅くて4時 【起床】7時半
平均睡眠時間 : 5~6時間
寝るときの服 : 夏は短パンとTシャツ、冬はトレーナー(ジャージ的な)
ベッドor布団 : ベッド(セミダブル)
寝るときの部屋の明るさ : 真っ暗が好ましいが、小さい明かりをつけたまま寝落ちすることも
寝る前に必ずすること : スマホゲームの「ジュースジャム」
睡眠とは? : 仕方なくするもの。もしくは暇つぶし。しないで済むならしないでいたい。

加齢と共に減る睡眠時間

古川 睡眠時間は短い方だよね?

スー でも、去年の春からラジオ(TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」11:00〜13:00)を始めてから長くなったよ。毎日5、6時間は寝ているから、すごく長くなった。というのも、やっぱり集中しなきゃいけないラジオが午前中にあって、月金で同じ時間に電車に乗らなきゃいけないってなると、さすがに前の日に寝なきゃいけないモードになる。

古川 じゃあ、かなり会社員っぽい寝方というか、朝ちゃんと起きないといけないから寝る、という感じだ。

スー まあ、やらなきゃいけないことがある時はそうもいかないから、起きていることもあるけど。でもやっぱり1時を過ぎると、「ああ、寝なきゃ」みたいな感じにはなってきた。

古川 今の寝る時間は?

スー 1時から2時の間ぐらいに寝て、起きるのは朝7時半。

古川 もともと決まった時間に起きるのは苦じゃない方? それとも慣れるまで時間がかかった?

スー もっと時間がかかるかと思ってたけど、意外とすぐ慣れた。ただ、やっぱり眠りがすごく浅くなってしまって。歳を取ったせいもあると思うんだけど、だいたい2時間おきぐらいに起きちゃう。だから、たとえば12時半とかに寝ると、3回ぐらい起きちゃうんですよ。お茶を飲んだりトイレに行ったりとか。

古川 あなた、人生の中で仕事が何回か変わっているじゃないですか。その時その時で睡眠の変化ってあったの?

スー どの仕事の時代でも、気がついたら朝4時とか5時まで起きちゃってた、みたいなことが常にあったけど、やっぱり歳を取ってきたのと、ラジオが午前中からあることによって、それがだいぶ減った。無為に朝まで起きてる、みたいなことは本当になくなったね。

古川 でも、昔メガネ屋さん時代(眼鏡チェーン店に勤務していた)、言わばカタギの暮らしだったじゃない? あの頃は朝何時に起きてたの?

スー 午前10時出勤で、会社まで歩いていけるところに住んでいたから、8時半とか9時に起きればよかったし、若かったから、朝4時とかに寝ても全然問題なかった。

古川 もともと睡眠時間が短くて済むんだもんね。徹夜はできる人なんだっけ。

スー どれを徹夜と呼ぶかっていう問題があるけど、本当に一睡もしない、いわゆる「完全徹夜」はほとんどしたことがなくて、とりあえず30分でも1時間でもかならず寝るようにはしている。

古川 それでかなり回復するの?

スー する。

古川 へー。じゃあ、やっぱりもともと睡眠時間が少なくて済む人なんだ。

スー そうみたい。

古川 で、今が一番人生でまともなサイクルなんだね。

寝ないで済むなら寝ないでいたい

スー ただ、そのまともなサイクルに慣れていないから、2時間おきぐらいに起きちゃうという事態が起こる。この前、朝5時ぐらいまで仕事して5時半に寝たんだけど、そうすると全然目が覚めなくて寝れて、すごいすっきりした。なんか夜中に目が覚めるっていうことの方がストレスだね。

古川 へー。深い眠りさえとれれば、夜は2時間とか3時間でいいんだ。

スー そうみたい。それで一応、翌日も差し支えが出ない程度にはできる。

古川 寝付きはいい方なの? 悪い方なの?

スー なにをもって寝付きとするかっていうのもあるけど、まあ、布団に入って30分以内には寝れる。ただ、たまに考え事をしてたり、すごい強いコーヒーを飲んじゃったりとか、前の日すごい寝坊をした日で寝づらいとかっていう時は、1時間とか寝れない時もある。でも、基本30分ぐらいかな。布団に入った途端にスヤ~、はない。

古川 今だったら平日は外にいるわけじゃない? で、家に帰ってくると、まずそこですぐに着替えるの?

スー もう、すぐパジャマに着替える。

古川 部屋着イコールパジャマの人?

スー そうそうそう。ジャージ。

古川 っていうことは、寝る前に風呂は入らない?

スー 入らない。たまーに気が向いてお風呂溜めたりはするけど、寝る前にお風呂に入るっていう習慣は全くない。必ず朝。

古川 っていうことはじゃあ、家に帰ったら即部屋着に着替えて。

スー 即。超即。

古川 起きてる状態から寝るときの切り替えのタイミングというか、変換ポイントみたいなのはあるの?

スー いや、それがないから無理やり作って寝るっていう。眠くなることはもちろんあるけど、寝る時間の前に眠くなることはほとんどない。

古川 つまり、起きている間はスイッチがオンの状態のまま?

スー そう。それを強制オフにする。

古川 じゃあ、だいたい12時ぐらいに「そろそろ寝なきゃいかんな」となって、そこから寝るまではわりと最短距離? 普通だったら、お風呂入って、歯を磨いて、みたいなのがいろいろあるじゃないですか。

スー まあ、メイクをしていたら、メイクを落とす。あとは歯を磨いたりして、それでスマホを持ってベッドに入る。スマホとは別のガラケーの目覚ましをかけて。そのガラケーをベッドのちょっと離れたところに充電器と一緒に置いてあるから、その充電器に挿して。で、布団に入る。

古川 部屋の電気は?

スー 基本真っ暗。

古川 どのタイミングで暗くしているの?

スー 全部、充電に挿すところまで終わったところで、消す。で、気持ちが丁寧な日は足元ランプとかをつけたりするけど、基本は真っ暗。で、スマホを持ち、Facebook見て、Twitterを見て、Instagramも見たり見なかったりして、それから……「ジュースジャム」。

古川 出た! スマホのゲームだよね?

スー そうそう。寝る前はやらない方がいいって言われていて、100%その通りだと思うけど、スマホのゲームをやるっていう。ブルーライトをバンバン目に浴びて、睡眠の質が下がることをしてるね。前は「パンダポップ」と「クッキージャム」ってゲームもやってたけど、個人的に時代は「ジュースジャム」に移り変わっていて、今は「ジュースジャム」一本。面で言うと800いくつまでいってる。

古川 よく分かんないけど、たぶん相当だろうね。

スー たぶんね。もう3~4年やってるから。

古川 わりとこの数年はその感じ?

スー そう。ただ、ラジオのレギュラーが毎日なかった頃は、ゲームを何時間やっていても翌日、ちょっと遅く起きればいいやとか、昼間うつらうつらしていればいいやって感じだったけど、もうそれはなくなって。だから変化があるとしたら、「ジュースジャム」の無料でできる範囲でかならず止める、課金はしなくなったってことかな。眠くなってきて、「もうダメだな」って思ったらパチッと消して、寝る。

古川 真っ暗でスマホの光もなくて、っていう状態の時間がほぼないんだ。

スー そうそう。そもそも寝ること自体、そんなにご褒美感はないから。渋々やることっていう。寝ないで済むんだったら寝ないで済ませたいのに、やらないと翌日が使い物にならないからさ。

古川 寝ないで済むなら寝ないでいたい……あら、睡眠に対してグルメ的な嗜好がまったくないんですね。

スー ない。寝ないで済むなら本当に寝たくない。

睡眠に対してドライな女

古川 じゃあ、いまがいちばん朝型生活?

スー そう。いままでの人生でいちばん早起き。「7時半に起きている自分が好き」っていう感じ。それでラッキーだったのは、歳を取って眠りが浅くなったことで、「7時半に起きれなかったらどうしよう」という焦りがない。起きれるって自分でもうわかっている。

古川 幸か不幸か、目覚めてしまう。

スー そう。勝手に目が覚めちゃう。40過ぎてからだけどね。なんか本当にムクッと起きられるようにはなっちゃった。もう朝7時半に起きて、シャワーを浴びて、身支度して、出る。

古川 さっきから聞いて思ったけど……睡眠に関してあなた、無味乾燥ね!

スー え? そう?

古川 ウエットかドライかで言ったら、まったくドライですな。

スー まぁ、こだわりもないし……あ、でもなんか、枕は2万7千円もするオリジナル枕を買ったよ。ベッドの枠は小学校の時からと一緒だけど。毛布も小学校から使ってるやつだし。

古川 物持ちいいねえ。物持ちがいいっていうか、買い替える関心がそもそもないんだろうね。この人は。

スー 羽毛布団も、私が中学ぐらいの時に親に買ってもらったやつをそのまま使ってるしね。2万7千円で買った枕以外、自分で買ったものはほとんどないや。枕カバーはアメリカに留学していた時に買ったやつ。

古川 軽く20年前だろう。

スー ラフ睡眠! なんだろう。頻繁にシーツを替えたりとかもしないしさ。ちょっと自分の匂いがついているぐらいの方がいいので。

古川 それはまあわかるけどさ。寝間着は?

スー もうグチャグチャ。「これ、本当に捨てなくていいの?」ってよく人に聞かれる、マニキュアをベーッてこぼして赤いインクがついたまま取れないでいるForever21で900円で買ったジャージ。で、上はTシャツ。で、今はその上にユニクロのモコモコのフリースを着て寝てる。

古川 どのぐらいの頻度で洗うものなんですか?

スー 1週間。中のTシャツは……それも、そうだね。1週間ぐらい着てるかな。ばっちいです。基本的にばっちいです。シーツも全然替えないです。2週間とか全然平気。

古川 睡眠を楽しもう的な気持ちがまったく感じられないね!

スー っていうか、まずその「睡眠の楽しみ方」っていうのがわからない。ちょっとお金を出して、「Sleep Cycle」(睡眠周期が浅くなったら起こしくれる目覚ましアプリ)を入れてみたりもしたんだけど、いつの間にかやめちゃったし。本当、睡眠を楽しむっていう方法がわからない。

古川 言っちゃえば「要は気を失うだけでしょ?」っ思ってる?

スー そうそうそう。だって、充電作業だから。携帯だって充電しないで一生使える携帯があったら、絶対にそっちの方がみんな買うじゃん?

古川 フフフ……。

スー 早くそういう携帯、出ないかな?っていう。

古川 たぶんこの連載に登場する中で、あなたが一番睡眠に対してドライだと思う。いや、でも、たしかに言われてみればそうで、「寝るのが好き」っていう人はなにをして「好き」と言っているか、ちょっと突き詰めて考えなきゃいけないなとは思ってた。

スー だってほら、気絶してるわけじゃん? 本当にオーバーホールのためだけに寝てるからさ。もちろん、肌の調子とか、どんな美容液よりもしっかり睡眠とったほうが効くっていうのは自分でもわかるし。あと、寝不足の人って、口から胃腸の匂いとかが上がってくるようになるね。歳を取るとそういう問題が睡眠不足と直結してくるっていうのは人を見ていてもすごくよく分かるから。だから、やらなきゃいけないからやるっていう……。

古川 根本的には、睡眠を嫌ってるぐらいの感じだね。

スー そう。寝なくて済むなら、もっと本を読んだりする時間とか、ビデオを見たりする時間とか、有意義に使えるだろうと。

古川 たまにいるね。寝るギリギリまで見たり読んだりインプットしてる人。

スー 私、私。

古川 いや、でも、それもたぶん2タイプに分かれて。見たことがない映画のDVDとか、読んだことがない本を読んでいる、まさに寝落ちギリギリまでインプットしてる人と、以前に一度見たことのある映画や小説を繰り返し読むという、ルーティーン型の人。後者はつまり、一種の儀式的なことなんだよね。で、あなたは同じゲームをやり続けているわけだから、儀式的なのものに近いと思う。で、「睡眠が楽しい」って言っている人の多くは、たぶんそこの時間が楽しいと言っていると思うんだよ。その儀式の時間が。

スー あ~、なるほど。

古川 推測するに、「もう寝るしかない」って諦めた時間が、昼間のよしなしごとや煩わしいことから解放される唯一の時間だからこそ、至福っていう感覚。

スー なるほどね。

古川 よく、映画好きな人が「映画館に入ったら、映画が終わるまでの時間は映画を見ることしかできないから幸せ」みたいなことを言うのが、たぶん近いんじゃないかな?って思ってるんだけど。

スー なるほどね。私は本当に、睡眠は翌日のためのオーバーホールだから。

古川 完全に起きている時間のためのものだ。

スー 絶対そう。それ以外に理由なんかないよ、睡眠に。起きている時間をいかに充実して有意義に使えるか? のギリギリのラインを攻めるっていう感じなの。だから今いちばん歯がゆいのは、夕方になると目がしょぼしょぼして見えなくなってくるとか、体の強制終了が本当に悔しい。それがなければもっとやりたいことをやれるし、精度も上げられるのに。

創作と睡眠の関係

古川 寝起きがいちばん頭がすっきりしているっていうのはあるじゃない? 知り合いの作家さんだと、その寝起きの状態をたくさん作るために細かく寝る人っているんですよ。

スー ああ、分眠する人。

古川 そう。3時間ぐらい寝て、起きて、すっきりとした頭でものを書く。で、ダメになったら強制的に寝る。たとえばお酒を飲んだりとかして。で、また起きて、っていうのを繰り返す人。このケースはともかくとして、クリエイティブな作業と睡眠の関係性はどう?

スー 翌日に影響が出る時間まで──具体的には夜の12時から朝4時ぐらいまで──がいちばん集中して書けるから、今は睡眠のためにその有意義な時間を放棄せざるを得ないという残念なことになってるね。だから、創作の質に影響が出てるっちゃあ出てる。

古川 制作のゴールデンタイムが睡眠時間にとられちゃうんだ。

スー そうそう。それが歯がゆい。でも、1ヶ月に1回ぐらいはその時間までどうしてもかかることがあって。そうすると、「なかなか面白いものが書けたぞ」っていうものができる。集中力がやっぱり全然違うからかなー。

古川 逆に、起き続けることによる集中力の低下ってないの?

スー それはもちろんある。けど、体力がなくなって事切れるまでは案外大丈夫。

古川 集中力はわりと長く続く方?

スー えっとね、集中力のスイッチはなかなか入らない。だから、集中力がない人に思われると思う。自分でもそう思う。ただ、固いスイッチが1回入ると、相当集中できる。ただ、固い。すべてのスイッチが固い。だから寝るスイッチも強制終了だし。

古川 そうか。強制終了だもんね。なだらかに睡眠に向かっていかないもんね。じゃあ、昼のラジオなかったら毎日ギリギリまで起き続けていた可能性もあるのか。ドライだとは思っていたけど、ここまでドライだとは思わなかったな。

スー ドライです。たとえばいま、2時間おきに細切れに起きちゃうのが軽いストレスだから、それがアロマかなにかを焚いたりすることで解消されるのなら嬉しい。けど、それが嬉しい理由は「たっぷり寝られる」ということじゃなく、「翌日のパフォーマンスが上がる!」っていう意味。でも、そのために「寝る30分前にはブルーライトを見ないで、ストレッチをして……」って言われると、「それはじゃあ、また今度」ってなる。

古川 それはそれで面倒くさいしっていう。


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睡眠を遠ざけたい

スー だから睡眠をどう楽しんでいいのか、全然わからないのよ。あと、睡眠薬に対する恐怖もすごいある。

古川 えっ、どういうこと? あれを使わないと寝れないようになっちゃったらマズいってこと?

スー っていうか、「あれを飲んでそのまま起きれなくなったらどうしよう?」みたいなことかな。一回も飲んだことないんだけどさ。だからたぶん、寝るのが怖いんだよね。だってほら、睡眠は……

スー・古川 「死のいとこ」!(アメリカのラッパーNASの有名な歌詞より:「I never sleep, cause sleep is the cousin of death」)

古川 でも、まあそうか。話を聞いていると確かに、眠りを遠ざけているとも言えるよ。

スー だから「睡眠薬、いる?」みたいな人とかいると、冗談じゃない!って。あれを飲まないと寝れないってなったら、本当にヤバいなって。でも、その「ヤバいな」っていうのは、「睡眠がちゃんととれなくなるから」とかじゃなくて、そのまま寝て起きれなくなったら……っていう恐怖。だから、コントロール・フリークなんだと思うね。自分で自分の体がコントロールできなくなる時間を強制的に作ることに対する恐怖がものすごくある。自分でコントロールできない時間、自分で自分のコントロールを手放す時間を作るのが、みんななんでそんなに平気なの?って思うよ。

古川 じゃあ、たとえば全身麻酔の手術って嫌?

スー 嫌! ないね。ないし、怖い。すっごい怖い。そういうことになったらやらざるを得ないんだろうけど、恐怖はすごく強い。

古川 本当にコントロール・フリークなんだね。だから睡眠自体、ちょっと避けたいんだ。

スー そうそう。だから仕方なく寝る感じ。よくさ、食に興味がない人っているじゃん? 食べないと死んじゃうから仕方なく食べる人。それは私から言わせたら「食事は娯楽!」ってことなんだけど、睡眠に対してはまさにそういう感じ。

古川 食に興味がない人が「ビタミン剤飲んで済ませらないかなぁ」って思っているような感覚だ。

スー そうそう。

古川 なるほどね。そりゃたしかに眠り方もそりゃあラフになるわな。

スー でも、今それを言われてびっくりしたよ。自分が全然偏っていると思っていなかったから。

古川 いろんな人に話を聞いていると、ちゃんと寝られなくなるのが怖いっていう会社員の人は結構多いみたい。寝不足が怖い、朝辛いのが怖い、っていう。だからこそ、快適に睡眠に入れる方法を探してる人が多いんだと思うよ。

スー 確かに、若くて会社員だった頃の方が入眠に対してもう少し神経質だったかもね。「寝ないと起きれない」っていうのがあったから。いまはもう、起きれるっていうのはわかっちゃったから、カジュアルになったけど。

古川 解脱感もちょっと入ってるんだね。

スー 今は睡眠が浅くなったことによって、確かに起きれる。ただ、いわゆる「いい睡眠」と言われる眠りを7、8時間したら、どれぐらいすっきりするんだろう?っていう興味は、あるにはある。

古川 でも今、別に昼間に眠気が慢性的にあるとか、そういうことはないんでしょう?

スー どうだろう……眠いっちゃあ眠いよ。いつも。

古川 複雑だな。眠いっちゃあ眠い。昼寝はするタイプ?

スー えーと、できるけど、する時間がないタイプ。だからたまに、ラジオが終わって仕事場に向かって、1週間の疲れがすごい蓄積されてるときとか、「これはダメだな」ってなると、三つ折りのマットレスを床に敷いて、その上でバーン!って1時間とか寝ると、シャキーン!ってなる。

古川 あ、その睡眠は結構、気持ちよくないですか?

スー 気持ちいい気持ちいい。でも、それは充電で言ったら残量2%ぐらいな感じだから。

古川 腹が減っている時に食べるメシが美味いのと同じっていうことか。

スー そうそうそう。だからやっぱり、7時間とかぶっ続けで寝たらどうなるだろう?っていうのには興味があるんだ。ただ、逆に疲れそうとか思っちゃうけど。

古川 たぶんもう、この歳になってくると、いろんな条件が奇跡的に噛み合って起こる睡眠なんだろうね。7時間熟睡ってね。

スー ユニコーンが出てくる感じだよ。神の使いが現れないと無理。

古川 あとは、あなた、酒を飲まないっていうのも大きいね。

スー そう。お酒を飲んでバッタリっていう経験が今まで1回もないから。だからさっきの「寝るのが怖い」「全身麻酔が怖い」っていうのは、お酒を飲まないことともすっごく関係してると思う。

古川 コントロール・フリークの話につながってくるよね。

スー うん。だからコントロールできない時間は短ければ短いほどいい。でも、翌日のパフォーマンスに関わってくるから、イヤイヤ寝る。もう本当、充電。完全に充電。

古川 ここまで睡眠に対する考え方とかスタイルが人となりと直結している人って初めてかもしれない……言っちゃえば、すごいジェーン・スーっぽい話だよ。

スー そう? 「ベッドサイドでラベンダーのアロマを焚いて……」とかがないってこと?

古川 そうそうそう。

スー だって、いちばん理想的なのは、夜中の2時でも3時でも好きな時間まで起きてて、2~3時間で目が覚めて、仕事に行って、昼間のラジオが終わったところで1時間半ぐらい昼寝して、そのあとまた仕事して、っていうので済んだらすごくいい。そしたら最高だよ。

古川 でも、その「最高」っていうのはあくまで「パフォーマンスを上げる」という意味においてでしょ?

スー そうそう。もちろんそう。それ以外なにもないよ! とにかく、今いちばんストレスがあるとしたら、体が前ほど無理がきかなくなっていることによって、せっかく経験値とか精度とかが少し上がってきたのに、それをいかせないのが本当に嫌。

古川 バレエダンサーが、芸術の真髄を理解した時にはすでに肉体が衰えていた……みたいな話をするけど。

スー そうそう。本当にそんな感じだよ。

古川 ドライだなぁ!

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調査を終えて

インタビュー本文でも言っているとおり、入眠スタイルや睡眠観がここまで人となりと直結している例も珍しい。しかしよく考えてみたら、睡眠への距離感を尋ねるのはその人の「寝ていない時間」の充実度を問うているのと同じであり、となるとつまりこの入眠調査は、睡眠を反射鏡として、人の生活を表裏一体まるごと写し出そうという試みとも言える。
なるほど、入眠調査とはなかなか奥深い……そうやってひとりで勝手に感じ入るほど、とても有意義な調査でありました。

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TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」meets「世界睡眠会議」Presents
トークショー「睡眠は踊る」

3月7日(火)@シアター代官山で開催!

TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」でパーソナリティを務めるジェーン・スーと脳科学者・中野信子さんに加え、睡眠文化研究会・鍛治恵さんを招いておくる120分の睡眠白熱トークセッション。このイベントの模様は世界睡眠会議のサイトや4月10日発売の雑誌『AERA』などに掲載されます。お楽しみに!
詳細はこちら

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あなたの入眠、大募集

入眠調査室では、あなたが眠る時にしている「ちょっと変わってるかもしれない儀式」を必要以上に細かく聞き取り調査していきます。「あなたの眠り方」「眠る直前に考えていること」「寝るときの服装や持ち物」など、できるだけ細かく具体的に書いて、応募フォームから送って下さい。調査員から調査依頼が届くかもしれません。よろしくお願いします。


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古川 耕
1973年生まれ。フリーライター、放送作家。「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」「ジェーン・スー 生活は踊る」(共にTBSラジオ)などの構成を担当。アニメーションやコミック、HIPHOP、文房具について執筆。年に一度のボールペン人気投票「OKB48選抜総選挙」主宰。人が眠りにつく過程を必要以上に細かく聞き取っていく「入眠調査」を密かな趣味とする。詩人でデザイナーの小林大吾と制作ユニット「四〇四号室」を主宰。
「四〇四号室」 

ロゴ&イラストレーション:小林大吾

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Super Dryでビックリした!

更新日:2017年3月3日 書いた人:古川耕

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