睡眠ライブラリー

不眠症かも? と悩む前に知っておきたい原因や対策

日本人の5人に1人は不眠症?

日常的に睡眠の満足感が低く、「私って不眠症なんだよね」などと呟いている人、あなたの周りにいないでしょうか。それもそのはず。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2014年)では、20歳以上の男女のうち20%の人たちが「睡眠で休養が十分にとれていない」と回答しています。とくに、働き盛りの年代でその傾向は強く、30代では27.5%、40代で32.5%もの人が、睡眠に不満を感じているのです。

また、製薬会社のMSD株式会社が2014年に実施した「不眠に関する意識と実態調査」では、なんと38.1%の人が「不眠症の疑いがある」という結果が報告されています。「ちゃんと眠れない」という悩みは、今の日本社会が抱える大問題ともいえそうです。


出典:平成26年「国民健康・栄養調査」

そもそも、不眠症ってどうなるの?

心配ごとがあるときなど、「眠りたいのに眠れない」という経験はほとんどの人があるでしょう。ただし、そうした特別な日に、もしくは数日間程度、なかなか眠れなかったり、何度も途中で目が覚めるといった状態で「私って不眠症かも!」とあわてる必要はありません。

不眠症とひとくちにいってもその症状はさまざまで、以下の4つのタイプに分けられています。

入眠障害:寝付きが悪い
中途覚醒:眠りが浅く途中で何度も目が覚める
早朝覚醒:早朝に目が覚めてしまう
熟眠障害:ある程度眠ってもぐっすり眠れたという満足感(休養感)が得られない

こうした睡眠の問題がおおむね1か月以上続き、日中に倦怠感や意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が現れるような場合は、専門の医療機関などに相談することが必要です。

白濱龍太郎先生に聞いてみました!

はたして、不眠症にはどのような対策をするべきなのでしょう。『RESM(リズム)新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック』院長で、日本睡眠学会認定医の白濱龍太郎先生に、お話しを伺ってきました。


白濱龍太郎先生
筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了(医学博士)。東京医科歯科大学呼吸器内科、東京共済病院呼吸器内科、東京医科歯科大学睡眠制御学睡眠センターを経て、現在、医療法人RESM理事長。社会医学系指導医、日本睡眠学会認定医、日本医師会認定産業医。
著書:『9割の不眠は「夕方」の習慣で治る』(SB新書)『人生が劇的に変わる睡眠法』(プレジデント社)『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム)など

Q. 不眠症の相談に来る患者さんは、やっぱり多いですか?

私の病院では睡眠時無呼吸症だけでもたくさんの患者さんが通院してらっしゃって、あまり多くの新患を受け付けることができないのですが、不眠の悩みを抱えて受診される方は少なくありません。また、病院以外の場所で、相談されることも多いですね。

不眠についての調査は主観的なアンケート形式にならざるを得ないので、正確な有病率を把握するのは難しいですが、厚生労働省などでも提言している「4〜5人に1人」が不眠に悩んでいるという数字は、おおむね実情といえるのではないでしょうか。

Q. 病院に来る人は、どんな治療を受けるのでしょう?

不眠症の症状や生活習慣は人それぞれですから、臨床でやることもまさにオーダーメイドです。一概に「不眠症にはこの治療を施す」とはいえません。

ただ、正確なデータを取っているわけではありませんが、不眠症で受診される患者さんのうち、生活習慣の改善などを促す「睡眠衛生指導」だけで症状が改善する方の割合はかなり高いといえます。なかには、睡眠薬を処方することもありますが、半数以上の方は副作用や依存性の懸念がある睡眠薬を使わなくても、症状が改善している印象がありますね。

Q. 不眠症の原因は何ですか?

深刻な不眠症になってしまう方には、なんらかの先天的な要因があり、強いストレスなど、なにかのきっかけで慢性化していくケースが多いといえます。ただし、生活習慣に気をつけるだけで状態が改善する方が多いことからもわかるように、睡眠に不満を抱えている人がこんなにも多いのは、現代の生活習慣や、社会のあり方に原因があると考えられるのではないでしょうか。

睡眠には自律神経、つまり、活動している時、緊張している時、ストレスを感じている時に優位になる「交感神経」と、休息している時、リラックスしている時、眠っている時に優位になる「副交感神経」のはたらきが深く関わっていることが知られています。

スムーズに入眠するためには、副交感神経が優位なリラックス状態にあることが大切なのですが、現代の日本社会では交感神経に偏った生活を強いられるようになっているのではないかと、私自身感じているのです。

Q. 交感神経に偏った生活って、どういうことでしょう?

わかりやすくいうと、24時間いつでも、仕事をやろうと思えばできてしまう環境が整ってしまったことですね。ベッドに入る直前まで、ネットに繋いだパソコンで仕事をしたり、ブルーライトを放つスマートフォンを使ってSNSで情報交換などをしていて、いきなり「さあ、寝よう」とベッドに入っても、なかなか寝付けないのは当然です。

人間に「オン・オフ」のスイッチはありません。交感神経を活発にする、つまり緊張を高めるのは比較的短時間で可能ですが、入眠に向けて副交感神経を優位にしていくのはすぐにはできません。たとえるなら、飛行機の着陸のようなもの。ゆっくりと高度を下げていく必要があるのです。人の眠りは、オスプレイで垂直に着陸するように訪れるものではないのです。とくに夕方以降の時間は、眠りに向けて、リラックスして副交感神経を優位にしていく生活習慣を心掛けることをおすすめします。

Q. 「快眠サイクル」を整えるのは『世界睡眠会議』のテーマでもあります!

快眠のための生活サイクルを意識するのは、とてもいいことだと思います。質の良い睡眠のためには、自律神経のはたらきを安定させて、深部体温を調整することが有効です。では、どうすればいいのかということを知識として手に入れて、味方につけることが大切なんですね。

これは、喫煙や食生活の習慣にも似ています。厚生労働省の調査結果でも、低所得者ほど喫煙率が高いと指摘されているように、意志が弱く、情報に押し流されてしまいがちな人は、生活のリズムが乱れて睡眠の質が下がりやすい傾向があるといえるでしょう。私自身、決まった時間以降は、メールなどの情報を見ないようにしています。正しい知識を得て、生活スタイルを自分の意思で取捨選択することをおすすめしたいですね。

Q. 治療が必要かどうか、みきわめるためのわかりやすい基準はありますか?

「ちょっと眠れないかな」とか「なんだか途中でよく目が覚めるな」と感じても、日常生活に支障がない状況であれば不眠症と診断はされません。生活サイクルに気を配りつつ、「眠らなきゃ」ということはあまり気にしすぎない方がいいケースも多いですね。

ただし、日中の眠気が悪化して、会議や商談の途中で眠ってしまったり、居眠り運転を繰り返し自覚するような場合、日本睡眠学会の睡眠医療認定医や医療機関で、相談することをおすすめします。

「眠りの質」をセルフチェック!
次の中で、当てはまる項目はいくつありますか?

(1)□ ベッドに入って寝付くまでに1時間以上かかることが多い。
(2)□ 途中で目が覚めて、なかなか眠れなくなることがよくある。
(3)□ 起きるつもりの時間より1時間以上早く目覚めてしまうことが多い。
(4)□ 目覚めた直後、だるさやふらつきを感じることがある。
(5)□ 日中もだるさや調子の悪さを感じることが多い。
(6)□ 居眠りを上司や同僚などから指摘されたことがある。
(7)□ 1か月以上、眠れないという感じる日が続いている。
(8)□ 眠れないことが不安で夜になるのが怖い。

4項目以上当てはまった人、また、後半の(6)〜(8)の項目に当てはまり、日常的に眠りへの不満を自覚している人は、治療が必要な不眠症の懸念があります。医療機関に相談してみましょう。

「ぐっすり心得」を実践してみてくださいね!

白濱先生、ありがとうございました! 多くの方が抱えているであろう不眠の悩み。ポイントを整理すると、こんな感じです。

  1. 日中のパフォーマンスに深刻な影響がないようであれば、あまり気にしすぎないこと。
  2. 睡眠に不満があるようなら、生活サイクルを整えるように心掛けるのが大切。
  3. 自律神経の安定や深部体温を調節するための知識を得ておこう。

厚生労働省の健康情報サイト『e-ヘルスネット』では、不眠への対処法として、「就寝・起床時間を一定にする」、「睡眠時間にこだわらない」などのコツが紹介されています。そのほかにも、生活習慣に関するさまざまなコツが紹介されていますが、その内容は『世界睡眠会議』が推奨する「ぐっすり心得」と、とても共通しています。

「ぐっすり心得」はこちら!

「ぐっすり心得」には15項目ありますが、毎日、すべてを実践しなければいけない、というものではありません。まずは一度、全体をしっかり頭に入れて、実践できそうな3項目程度を選んで心掛けていくのが長続きのコツ。眠りへの不満から脱却して、睡眠セレブを目指してくださいね!


白濱先生の著書『9割の不眠は「夕方」の習慣で治る』(SB新書)もおすすめです!
SB新書ウェブサイトAmazon

あなたのためのオススメ記事

サイト内検索

サイトメニュー

特集お役立ち連載インタビューお知らせ