短時間睡眠で仕事を頑張るためのコツはないですか?

睡眠ライブラリー
白濱龍太郎先生の睡眠なんでも相談~その4

日本睡眠学会認定医の白濱龍太郎先生に、眠りに関する疑問を相談するシリーズ企画。第4弾は「短時間睡眠のコツを教えて!」という相談です。

「やり手の先輩に話を聞くと、毎日の睡眠時間は4時間ほどで頑張っているそうです。私は寝不足だと頭がボーッとして、つまらないミスをしてしまう。短時間睡眠でも頑張るためのコツが知りたいんです」というのは、時間が不規則になりがちな出版社に勤める相談者。でも、白濱先生の結論としては「慢性的に短時間睡眠で頑張るのはダメですよ」ってこと。「睡眠不足は、パフォーマンスを落とす要因になります。なんとか適切な睡眠時間を確保して、質を高める工夫をしてください」とのことでした。

とはいえ、仕事や育児に追われるなどして、なかなか十分な睡眠時間を確保できないという方も多いはず。なぜ、短時間睡眠はダメなのか。そして、睡眠そのものの質を高める(睡眠時間が確保できない時にもなんとかしたい!)ためにはどうすればいいのか。白濱先生からのアドバイスをご紹介します。

「ショートスリーパー」はほとんどいない?

日本人には、寝ないで頑張っている方がカッコいいと勘違いしている人が多いようにも感じます。なかには、ショートスリープ(短時間睡眠)を推進している同好の士までいると聞くし、光の刺激などを利用して睡眠時間を調節する研究をしている企業もあるようですね。

でも、人間にとって必要な睡眠時間は遺伝子レベルで決まっています。一部、本当に短時間睡眠でも心身への影響が現れにくい遺伝子的なショートスリーパーが存在するのではないかとされていますが、まだ科学的に明確ではない上に、存在したとしても非常にまれなレアケースです。無理してでも短時間睡眠で頑張る、つまり、遺伝子レベルで定められている「必要な睡眠時間」を侵害するのは、相談者が「ミスをしてしまう」ように、日中のパフォーマンスを落とし、深刻な疾病の要因になることさえあります。絶対にオススメできないですね。

ベッドに入ったらすぐに眠れる自慢?

みなさんの周囲に「オレ、ギリギリまで仕事していても、ベッドに入ったらすぐ眠れるんだよ」などと自慢している人はいませんか? 本人は「効率よく頑張っているオレってすごい」と言いたいのかもしれないですが、実は「ベッドに入ってすぐに眠れる」という現象は、慢性的な睡眠不足の兆候です。

入眠と覚醒は飛行機の離着陸のようなものと考えてください。緩やかな曲線を描くソフトランディングとテイクオフが理想的で自然な状態です。でも「すぐに眠れる」のは、いわば垂直着陸(あるいは墜落……)。効率がいいと考えるのは勘違いで、あまり望ましい入眠状態ではありません。

また「一度寝るとぐっすり。少々のことでは目が覚めない」というのも、睡眠負債がたまっている可能性があります。無理な短時間睡眠が続いている、すなわち慢性的に睡眠不足の人ほど、眠りが深い傾向があるからです。

もちろん、長く眠ればいいというものではありません。人によって本当に必要な睡眠時間は異なりますが、おおむね6〜8時間程度。長さと深さのバランスがいい睡眠こそが「質の高い睡眠」となり、本当に仕事を頑張る原動力となるのです。

睡眠の質を高めるためのコツはあります。

どうしても短時間しか眠れないという場合も、できるだけ質のいい睡眠をとれるように心がけることが大切です。そのためのちょっとしたコツを紹介しておきましょう。

コツ1●帰宅したら眠るための準備を始めよう!

以前の記事『ビジネスマンの睡眠改善は「夕方からの生活習慣」がポイント!』でもお話ししたように、仕事をバリバリ頑張りたいなら、夕方以降の生活習慣を改善するのがオススメです。夕方からなんて忙しくて無理! というのでしたら、せめてベッドに入る1時間前、つまり帰宅してからの時間は「深部体温」や「リラックス」といった、眠りの質に関わるポイントを意識して過ごすのがいいですね。

コツ2●帰宅したらまずはちゃんと入浴する!

具体的な方法を挙げておきましょう。まずは「入浴」です。一度上昇した深部体温が下がっていく時にベッドに入るのが、スムーズな入眠のために望ましい。そのためにも、就寝の60〜90分前の入浴がオススメです。帰宅したらまずお風呂に入る習慣を実践してみてください。また、お風呂から上がった後は、できるだけパソコンやスマホ、照明器具などのブルーライトを見つめない(電球色などの明るすぎない照明で過ごす)のが効果的です。

コツ3●ストレッチでリラックス!

次にオススメしたいのは「ストレッチ」です。ほんの数分で構いません。お風呂上がりなどに、肩甲骨をほぐすストレッチや、血行をよくするスクワットなどを行うと、深部体温をいったん上げることに役立つほか、ココロをリラックスさせてくれる効果も期待できます。

ストレッチのやり方なども『ビジネスマンの睡眠改善は「夕方からの生活習慣」がポイント!』で紹介していますから、参考にしてください。

コツ4●ソファで寝落ちは絶対避ける!

また、ソファでテレビなどを見ているうちに「つい寝落ちしちゃう」という生活習慣は最悪です。睡眠の質を高める、つまり、脳や身体の疲れを回復したり、成長ホルモンなどが正しく分泌されるためには、入眠して最初の3時間ほどの間に現れるノンレム睡眠(深い睡眠)がとても大切なことがわかっています。テレビや照明の光や音もそのままに、布団も掛けずにソファで寝落ちしてしまうと、大切な「深い睡眠」を得ることができません。

ちゃんと布団に入って眠らないのは、いわばスマホの充電器がコンセントに繫がっていないようなもの。寝室はちゃんと「深く眠る」ための環境を整えて、ソファで寝落ちのような生活習慣はぜひとも改善してください。

また「22時〜2時がシンデレラタイムというのは都市伝説」とされていますが、24時前後に最初の深い睡眠の時間が来るように(入眠から30〜60分後くらいが目安)毎日の就寝時間をできるだけ同じ時間帯にするのはオススメです。少し時間がズレても構いませんが、24時前後には眠っている生活習慣を実践することで、自律神経のリセットがスムーズになり、効率よく回復することに役立ちます。

【まとめ】ちゃんと眠ってポジティブな人生を!

いかがでしたか。寝ないで頑張る! は遺伝子レベルで無理しているってこと。そして、睡眠の質を高めるための手軽に実践できるコツがあるということが、白濱先生の説明でよくわかりました。

さらに、どうしても睡眠不足が続き、眠くて仕事がはかどらない! などという時は「15時までに20分以内のナップ(お昼寝)を活用するのもいいですね」と白濱先生。相談者が言う「やり手の先輩」も、お昼寝を上手に活用しているのかも知れません。上手な昼寝の方法については、『昼寝の前にはコーヒーを飲むのがオススメ?』という記事でご紹介しています。

「人生って、毎日山を登って下りることを繰り返しているようなもの。少しでも気力を保ち、ポジティブに生きていくためにも、睡眠がとても大切なんですよ」と白濱先生。つまり、睡眠こそが人生の質を決めちゃうとも言えそうですね。

ちゃんと眠って、ポジティブな人生を楽しみましょう!

(世界睡眠会議編集部)

白濱龍太郎先生
筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了(医学博士)。東京医科歯科大学呼吸器内科、東京共済病院呼吸器内科、東京医科歯科大学睡眠制御学睡眠センターを経て、現在、医療法人RESM理事長。社会医学系指導医、日本睡眠学会認定医、日本医師会認定産業医。
著書:『9割の不眠は「夕方」の習慣で治る』(SB新書)『人生が劇的に変わる睡眠法』(プレジデント社)『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム)など

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