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放置は禁物!『睡眠時無呼吸症』の基礎知識

放置は禁物!『睡眠時無呼吸症』の基礎知識

重症の場合、8年以内に40%の人が死亡する!

2017年10月、東京大学で行われたスタンフォード大学「睡眠生体リズム研究所」所長の西野精治教授の講演で、ショッキングな話を聞きました。中度から重症の『睡眠時無呼吸症(以下、無呼吸症)』を治療せずに放置していると、8年後には約40%の人が死亡するという調査結果があるというのです。

無呼吸症になると、日中にマイクロスリープ(瞬間的な居眠り状態)が頻繁に起こり、肥満や高血圧といった生活習慣病のリスクが高まって、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病といった命に関わる病気のリスクが高まるからです。つまり『睡眠時無呼吸症』は放置せずに治療が必要な疾患といえます。

無呼吸症は決して珍しい疾患ではありません。日本では、無呼吸症の有病率が男性で約4%、女性で約2%と推定されており、潜在患者は少なくとも200万人以上といわれます。ところが、自分が無呼吸症であると自覚してきちんと治療を受けているのは、そのうちのごく一部だけというのが現状です。

はたして、睡眠時無呼吸症とはどんな病気なのか。どんなことに注意して、どんな治療をすればいいのでしょうか。気になる、いえ、ぜひとも知っておくべき無呼吸症の基礎知識をご紹介します!

睡眠時無呼吸症とは?

睡眠時無呼吸症とは?

睡眠時無呼吸症は、眠っているとき頻繁に呼吸が止まってしまう疾患です。2014年に改訂された睡眠障害国際分類第三版では、以下のような診断基準が定められています。

【A】下記項目に一つ以上該当する。

  1. 昼間の眠気、寝ても疲労が回復しない、だるさ、不眠などを感じている。
  2. 息のこらえ、あえぎ、窒息感を伴って目が覚めてしまうことがある。
  3. 同居の家族などから寝ている時のいびきや、呼吸の中断、またはその両方を指摘される。
  4. 高血圧、気分障害、認知能力の低下、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性の心不全、心房細動、または2型糖尿病と診断されている。

【B】検査によって、睡眠中1時間当たり5回以上の閉塞性無呼吸(閉塞性・混合性無呼吸、低呼吸や呼吸関連覚醒)が認められる。

【C】検査によって、睡眠中1時間当たり15回以上の閉塞性無呼吸(閉塞性・混合性無呼吸、低呼吸や呼吸関連覚醒)が認められる。

こうした診断基準のうち、A+BまたはCの基準を満たした場合、成人の閉塞性睡眠時無呼吸と診断されて、治療が必要であるとされています。

ちなみに、日本では睡眠時無呼吸症候群(SAS)が病名としてよく知られていますが、睡眠障害国際分類第三版では「閉塞性睡眠時無呼吸症(OSAS)」「中枢性睡眠時無呼吸症(CSAS)」など、より細分化した病名が定義されています。このうち、中枢性の無呼吸症は「呼吸しなさい」という脳からの指令伝達に障害が生じて起きる無呼吸で、閉塞性では診断の目安ともなる「いびき」をかかない特徴があります。

閉塞性睡眠時無呼吸症で、症状が重い人の場合は1時間に20回以上も呼吸が止まります。睡眠は本来、起きている時に活動した脳や身体を休息させるための時間です。ところが、数分に1回のペースで口や鼻をふさがれた状態で眠っていることになるのですから、十分な睡眠をとることができず、脳や身体に大きな負担がかかってしまうのは当然です。

やっかいなことに、寝ている時に無呼吸になっているかどうか、自分ではなかなか気付くことができません。次に紹介する症状に心当たりがある人は、早めに医療機関できちんとした検査を受けることをオススメします。

どんな症状があるの?

無呼吸症には、どんな症状があるのでしょうか。ここでは「睡眠時」「起床時」「日中」の3つのシーンごとに、代表的な症状の例をご紹介します。「睡眠時」の症状については自分では確認しにくいので、同じ寝室で寝ている家族に尋ねたり、『「いびき」かいていない? 無料アプリでチェックしてみよう』でご紹介しているアプリを活用するなどして、ぜひ一度きちんと確認してみましょう。

睡眠時の症状

  • 大きないびきをかく。
  • 呼吸が止まっていることがある。
  • 何度も途中で目が覚める。

起床時の症状

  • 口の中が渇いている。
  • 熟睡できた満足感がない。
  • 頭痛があったり身体が重いと感じることがある。

日中の症状

  • 強い眠気を感じることが多い。
  • 集中力が続かず仕事などの効率が落ちている。
  • 疲労が取れないと感じる。

とはいえ、自分が昼間、どのくらい眠気を感じているかというのは、客観的に判断しづらいものです。そのために医療機関などでも使用されているのが「ESS=Epworth sleepiness scale」という調査票です。試しにやってみてください。

ESS調査票

選択した点数の合計が「11」を超えるようであれば要注意。大きないびきは閉塞型無呼吸の特徴的な症状といわれていますが、『中枢型』の場合はいびきをかかないこともあります。いびきはひどくなくても、寝ている時に呼吸が止まっていることを指摘されて、ESSの点数が11点以上になるほど日中に強い眠気を感じるのであれば、早めに専門の医療機関で検査するのがいいですね。

無呼吸症になりやすい人の特徴は?

無呼吸症になりやすい人には、いくつかの特徴的な傾向があるとされています。こうした特徴は「いびきをかきやすい人」にも共通しています。

肥満

肥満やメタボリックシンドロームになると、首や喉のまわりに余分な脂肪が増えて気道が狭くなっていびきをかきやすくなり、無呼吸に陥りやすいといわれています。

顎が小さいなど

太っている人だけでなく、体型はスリムでも顎が小さい人は仰向けに寝ている時に気道がふさがりやすくなります。

鼻づまりなど

鼻づまりなどで鼻呼吸がしにくい状態になると、どうしても口呼吸が多くなり、いびきをかいたり無呼吸の原因となりやすくなります。鼻中隔弯曲症や扁桃腺肥大、アレルギー性鼻炎などの疾患が原因となっていることもあります。

更年期

女性の場合、更年期以降はホルモンバランスの変化や加齢による筋力の衰えによっていびきや無呼吸になりやすいといわれています。

もちろん個人差はありますが、おおむね男性は30〜60歳代の働き盛り世代、女性は更年期以降の世代で無呼吸のリスクが高まるとされています。とくに、メタボリックシンドロームの傾向がある方は要注意です。

居眠り運転などのリスク

居眠り運転などのリスク

日本で無呼吸症が注目されるようになったのは、ある交通事故がきっかけでした。2003年2月、山陽新幹線で運転士が居眠りをしたまま運転し、ATC(自動列車制御装置)が作動して岡山駅の所定の停止位置の100m手前で列車が停止。車掌に声をかけられて目を覚ますというトラブルが起きて、マスコミでも大きく報道されたのです。

2003年の3月にはこの事故を受けて国土交通省が『睡眠時無呼吸症候群(SAS)に注意しましょう』というマニュアルを策定。運輸業界で無呼吸症の検査や適切な治療が必要であることを呼びかけているのですが、その後も毎年のように無呼吸症が原因とみられる大きな交通事故が相次いでいます。

生活習慣病のリスク

無呼吸症のリスクは、居眠りによる事故だけではありません。冒頭でもご紹介したように、無呼吸症を発症するとさまざまな生活習慣病が高い確率で合併症となってあらわれることが指摘されています。

生活習慣病の合併症発症リスク

生活習慣病の合併症発症リスク
出典:『睡眠検定ハンドブック』(全日本病院出版会)

正常な人を「1」とすると、高血圧は2倍、脳血管障害は4倍にもなるといわれていて、まさに命に関わる病気に繋がるリスクが高いのです。

どんな治療方法があるの?

睡眠時無呼吸症の心配がある方は、まずは早めに専門の医療機関を受診することが大切です。無呼吸症であると診断されると、症状や原因によって、おもに以下のような治療が行われます。

CPAP(シーパップ)

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)と呼ばれる医療機器を使って、気道に空気を送り込み、いびきや無呼吸を防ぐ治療法です。欧米や日本では最も普及している治療法ですが、いびきなどを根本的に治すことはできません。定期的に医療機関を受診しながら、根気強く続けることが大切です。

CPAP(シーパップ)

マウスピース

比較的症状が軽い場合には、その人の口や歯並びなどの形状に合わせた口腔内装置(マウスピース)を作って使用する治療法が選択されることがあります。

マウスピース

外科的手術

扁桃肥大などが原因となっている場合は、摘出手術などの外科的治療が行われることがあります。CPAPやマウスピースとは異なり、原因を排除して根本的な治療を目指す方法です。

このほか、個人の症状や原因にあわせて体位治療(横向き寝のサポート器具の使用など)の代替治療が行われることもあります。

いずれにしても、きちんと治療するためには、専門の医療機関で検査を受けて、医師に相談しながら自分に合った治療を選択することが必要です。また、肥満や喫煙、過度な飲酒などの生活習慣が原因となっているのであれば、ダイエットをしたり、生活習慣を改善していくことが大切です。

医療機関で無呼吸症と診断されれば、CPAP使用やマウスピース作成にかかる費用には健康保険が適用されます。

どんな医療機関に行けばいいの?

大きないびきは無呼吸症の危険信号でもあります。いびきを自覚していたり、誰かに指摘されたら、まずは専門の医療機関で相談してみるのがオススメです。とはいえ、いびきや無呼吸症の診察を受けるには、どんな病院に行けばいいのでしょうか。

まず、医療機関探しの目安としたいのが、『「いびきを止める」いい方法はありますか?』でいろいろと教えてくれた千葉伸太郎先生が事務局長を務める「日本睡眠学会」の認定医が所属する医療機関です。

>日本睡眠学会公式サイト

公式サイトのメニューにある『睡眠医療認定医リスト』をクリックすると、認定医や認定医療機関のリストを見ることができます。

ただし、無呼吸症の治療を行っている医師や医療機関がすべて日本睡眠学会の認定を取得しているわけではありません。「睡眠時無呼吸症 病院」や「睡眠外来」というキーワードにお住まいの地名をあわせて検索すると、受診しやすい医療機関を見つけやすいでしょう。

監修:千葉伸太郎氏

監修:千葉伸太郎先生

太田総合病院記念「太田睡眠科学センター」所長。一般社団法人良質睡眠研究機構(代表理事:西野精治氏)専務理事。東京慈恵会医科大学准教授。日本睡眠学会事務局長(認定医)、日本耳鼻咽喉科学会専門医。

参考書籍など
『睡眠検定ハンドブック』(全日本病院出版会)
『スタンフォード式最高の睡眠』西野精治(サンマーク出版)
『国立循環器病研究センター循環器病情報サービス』ウェブサイト
『厚生労働省 e-ヘルスネット』ウェブサイト

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