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世界には、心地よく眠りへ誘う、素晴らしい音楽がたくさんあります。
そんなDreamtime Songs~世界の眠族音楽をブロードキャスターのピーター・バラカンさんがセレクトします。

ピーター・バラカンさんが第7回のDreamtime Songに選んだのは、アーレン・ロス(Arlen Roth)が2015年に発表したアルバム『Slide Guitar Summit』から、「Stranger On The Shore」(Arlen Roth with Cindy Cashdollar)です。

サイモン&ガーファンクルやボブ・ディランなど、多くの著名ミュージシャンのバックでギターを弾いており、「ギタリストのギタリスト」「マスター・オヴ・ザ・テレキャスター」ともいわれる名人、アーレン・ロス。スライド・ギターの名手でもあります。そんな彼が2015年にリリースしたのは、スライド・ギターの競演ばかりを集めたアルバム『Slide Guitar Summit』。そこからバラカンさんは「Stranger On The Shore」を選ばれました。まるで夢の中にいるような音色が印象的な曲です。
この曲と、スライド・ギターにまつわるエピソードについて、バラカンさんにおききしました。

(取材・文 高橋芳朗)

バラカンさんの
スライド・ギター原体験は
ストーンズ

ー アーレン・ロスはスライド・ギターの名手ということで、まずはバラカンさんのスライド・ギター原体験を教えてください。

バラカン 僕のスライド・ギター原体験は、たぶんローリング・ストーンズの「Little Red Rooster」(1964年)。ハウリン・ウルフのカヴァーで、スライド・ギターを弾いてるのはおそらくブライアン・ジョーンズですね。ストーンズはセカンド・アルバム『The Rolling Stones No. 2』(1965年)に入っていたマディ・ウォーターズの「I Can’t Be Satisfied」も強く印象に残っています。

ローリング・ストーンズ「Little Red Rooster」

ー やっぱりストーンズが最初なんですね。

バラカン それから1967年のキャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド『Safe As Milk』が出るまでの2~3年間はあまりスライド・ギターを耳にしていないかもしれない。1967年ごろからはどんどんブルーズにのめり込んでいって、それに伴ってスライド・ギターもたくさん耳に入ってくるようになりました。ロバート・ジョンスンだったりエルモア・ジェイムズだったりブカ・ワイトだったり、ぐっと本格的になってくる。ロバート・ジョンスンを初めて聴いたときは度肝を抜かれましたね。ジョニー・ウィンターがコロムビアと契約する前に出したデビュー・アルバム『The Progressive Blues Experiment』(1968年)もすごかった。

ー ロックの作品にスライド・ギターが頻繁に出てくるようになるのは70年代に入ってからですか?

バラカン そうですね。ライ・クーダーを最初に聴いたのが1972年の『Into The Purple Valley』。同じころにはボニー・レイトの『Give It Up』(1972年)も聴いています。その翌年、1973年にリトル・フィートの『Dixie Chicken』を聴いてさらにスライド・ギターにハマりました。でもやっぱりドゥウェイン・オールマンの存在が大きいですね。オールマン・ブラザーズ・バンドの『The Allman Brothers Band』(1969年)や『Idlewild South』(1970年)もよく聴いていました。ブルーズが市民権を得ていた時代ですね。

一級の職人ミュージシャン、
アーレン・ロス

ー では、アーレン・ロスとの出会いを教えてください。

バラカン 確かラウンダーから出た最初のソロ・アルバム『Guitarist』(1978年)ですね。ああいうちょっと渋めの、いまでいうアメリカーナみたいな音楽はたいてい好きでしたから。彼は本当に職人ミュージシャンですよね。もうなんでも弾けてしまうような、ちょっと裏方的な感じがするギタリストです。いまはウッドストックを拠点に地道な活動を続けていて、今回紹介する「Stranger On The Shore」が入った『Slide Guitar Summit』(2015年)も自分のレーベルから出したものだと思います。


ファースト・ソロ・アルバム『Guitarist』

ー 「Stranger On The Shore」は、もともとイギリス人クラリネット奏者のアカー・ビルクが1961年にヒットさせた曲ですね。当時BBCで放映していた同名のテレビドラマの主題歌だそうで。

バラカン 「Stranger On The Shore」は当時ラジオで毎日のようにかかっていました。そのころはイギリスでトラッド・ジャズが大人気で、山高帽をかぶったアカー・ビルクをテレビでよく目にした記憶があります。「Stranger On The Shore」は本当に大ヒットした曲で、イギリスだけじゃなくアメリカのチャートでも1位になってる。別にジャズでもなんでもなく、ただのイージー・リスニングみたいな曲なんですよ。当時はあまりかっこいい曲には思えなかったんだけど、ひさしぶりにアーレン・ロスの演奏で聴いたらすごくよかった。子供のころの記憶が刺激されたのかもしれないな(笑)。またこのメロディーとスライド・ギターの音色が合ってるんでしょうね。

ー アーレン・ロス版の「Stranger On The Shore」を睡眠に適した曲として選んだ理由を教えてください。

バラカン かなり単純ですよ。いかにもドリーミーな感じの曲ですよね。

ー 確かに、幻想的でいてちょっとした浮遊感もあって、心地よく眠りにいざなってくれそうです。

バラカンさん推薦の
スライド・ギター
名演集

ー では最後に、今回のアーレン・ロスを通じてスライド・ギターに興味をもった方にバラカンさんおすすめのスライド・ギターの名演をいくつかあげていただけますか?

バラカン エルモア・ジェイムズだったらわりとスローな曲がいいですね。特に「It Hurts Me Too」(1965年)の音色が好きだな。ロバート・ジョンスンは「Come On In My Kitchen」(1937年)、マディ・ウォーターズは「Honey Bee」(1957年)、デレク・トラックスだったらメドリーになってる「Sahib Teri Bandi – Maki Madni」(2006年)。ライ・クーダーは……ありすぎて困る(笑)。でも1曲選ぶなら「Taxes On The Farmer Feeds Us All」(1972年)かな。ローウェル・ジョージ/リトル・フィートは「Two Trains」(1973年)、オールマン・ブラザーズ・バンドは「Statesboro Blues」(1971年)ですね。

ライ・クーダー「Taxes On The Farmer Feeds Us All」

suichan-cmt-05
甘くとろけるような一曲、ありがとうございました。

アーレン・ロス(Arlen Roth)
1952年アメリカ・ニューヨーク生まれ。1970年はじめてのバンドSteelでデビュー。以降、バックギタリストとしてキャリアを築いていく。1974年にビー・ジーズとツアー、1978年にはボブ・ディランのローリング・サンダー・レビューにも参加。1983年には再結成したサイモン&ガーファンクルや、ヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースなどのツアーにも参加している。ソロキャリアは1978年の「ギタリスト」から始まり、2017年までに15枚のアルバムを発表している。また、ギター、スライド・ギターの教則ビデオも高く評価されている。
https://www.arlenroth.com


Peter Barakan ピーター・バラカン
1951年ロンドン生まれ。ブロードキャスター。
1980年代から日本のラジオDJ、ブロードキャスターとして古今東西の素晴らしい音楽を紹介。日本の音楽文化を格段に豊かにした功労者のひとりであり、多くの音楽ファンから絶対的な信頼を集めている

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ロックの英詞を読む 世界を変える歌
ピーター・バラカン著(集英社インターナショナル)

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peter barakan dot net


取材・文 高橋芳朗

1969年生まれ。東京都港区出身。タワーレコードのフリーペーパー『bounce』~ヒップホップマガジン『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。エミネム、ジェイ・Z、カニエ・ウェスト、ビースティ・ボーイズらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』と『都市型生活情報ラジオ 興味R』の選曲も手掛けている。

ジェーン・スー 生活は踊る
都市型生活情報ラジオ 興味R
高橋芳朗(Twitter)

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世界の眠族音楽 Vol.6:Stuff
世界の眠族音楽 Vol.5:サント&ジョニー
世界の眠族音楽 Vol.4:リオン・レッドボーン
世界の眠族音楽 Vol.3:チャールズ・ロイド
世界の眠族音楽 Vol.2:ボビー・チャールズ
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