千葉伸太郎先生に聞いてみました

花粉症の季節にも
ぐっすり眠る
3つのポイントは?

そろそろ、花粉症の季節がやってきます……

日本アレルギー協会会長の奥田稔氏が行なった1万人を対象とした疫学調査では、杉花粉症の有病率が全国平均で15.6%もあることが指摘されています。南関東では23.6%、東海では28.7%など、およそ4人にひとりが花粉症であるとされています。

花粉症の代表的な症状といえば、くしゃみや鼻水、鼻づまりです。この季節になると「鼻づまりでよく眠れない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

花粉症は、睡眠の質にも大きな影響を与えているのでは? ということで、日本睡眠学会睡眠医療認定医である千葉伸太郎先生(太田睡眠科学センター所長)に、花粉症が睡眠におよぼす悪影響と、その対策についてお話しを聞いてみました。


千葉伸太郎先生
太田総合病院記念「太田睡眠科学センター」所長。一般社団法人良質睡眠研究機構(代表理事:西野精治氏)専務理事。東京慈恵会医科大学准教授。日本睡眠学会事務局長(認定医)、日本耳鼻咽喉科学会専門医。

花粉症で睡眠の質は
悪くなるんでしょうか?

悪くなる方が多いといえます。一般的には、花粉症で鼻が詰まることによって「眠りづらい」「眠った気がしない」「途中で何度も目が覚める」といった不眠症と同じような症状を感じる患者さんが多いですね。

その原因は?

実は、花粉症の「夜間、睡眠中の症状」について学問的な研究が始まったのは比較的新しく、2000年を過ぎてからのことです。なぜ花粉症で睡眠の質が悪くなるのか、はっきりしたメカニズムはまだ明確にされていないのが現状ですが、大きく分けて2つの要因が指摘されています。

要因 その1
いびきや無呼吸の影響で
ぐっすり眠れなくなる

ひとつ目の要因は、鼻づまりによって「いびき」や「無呼吸」が起こり、その影響で睡眠の質が下がることです。

鼻や口から、喉、肺へと繋がる「気道」は一本の筒になっています。通常は鼻から息を吸い込むべきなのですが、鼻が詰まって入口が狭くなるとどうしても口から強く息を吸い込もうとしてしまいます。

鼻の中には骨もあって気道の筒がしっかりしますが、それに比べて喉はとても柔らかい。柔らかい喉が潰れて狭くなったところに、流速の速い空気(息)が通ることにとって喉の肉が震動して生じる摩擦音、これが「いびき」の正体です。

そして、口を開けると顎(下あご)がゆるみ、喉(気道)がさらに狭くなります。つまり呼吸しづらいことで眠りにくいと感じる人が多い上に、いびきが悪化し、さらには喉の気道が潰れてふさがってしまうことによって「無呼吸」の状態に陥ってしまうことがあるのです。

睡眠ライブラリー:放置は禁物!『睡眠時無呼吸症』の基礎知識

要因 その2
炎症からの神経伝達物質が
悪さをするのかも

ふたつ目の要因として挙げられるのが、花粉症そのものが睡眠の質を下げるという学説です。詳しく説明すると、これがさらにふたつの要因に分けられます。

まず、花粉症はアレルギーの一種です。アレルギーというのは人体の抵抗力である免疫のシステムに狂いが生じて過剰反応を起こし、炎症、つまり腫れるなどの症状が引き起こされます。炎症が起きるとさまざまな神経伝達物質が分泌されるのですが、そうした物質の中に脳の視床下部にある「眠りの中枢」に悪さをするものがあるのではないと推察されているのです。

鼻のセンサーが
「ぐっすり」を制御している

もうひとつが、鼻呼吸できないことが質のよい眠りを阻害しているという説です。鼻の中には、呼吸時に作動するさまざまなセンサーがあるといわれています。たとえば温度や湿度などを感じ取るためのものですね。

とくに睡眠時は、鼻呼吸によって脳の温度を調整している可能性もあります。したがって、鼻呼吸自体が脳と連動してよい眠りを維持する調節をしている可能性があるのです。鼻呼吸ができない状態では、そうした調節機能がうまく作動せず、眠りの質が下がってしまいやすいということですね。

花粉症に負けず、
ぐっすり眠るために
やるべきことは?

鼻呼吸が質のいい睡眠のコツ!」なんですね。これは耳よりなことを教えていただくことができました。

とはいえ、ひどい花粉症になってしまえば鼻呼吸ができません。どうすればいいのか、睡眠の専門家である千葉先生に伺ったアドバイスをご紹介します!

ポイント1
まずは、きちんと予防する。

花粉症対策として、まず最初にやるべきことは「予防」ですよね。具体的には、できるだけ花粉を吸い込まないようにすること。そして、花粉を家の中に入れないようにすることが基本です。

よく知られていることではありますが、外出時にマスクをしたり、衣服に付着した花粉をしっかり払い落としてから家に入るようにしてください。

ポイント2
室内の環境を整える。

もうひとつのポイントが、とくに寝室など、室内の環境を整えることです。まず、花粉の飛散が多い日は窓を開けないようにしたり、掃除をしっかりするようにして、布団や枕を外に干さないようにしましょう。空気清浄機や加湿器を使って、室内の空気を快適に保つこともいいですね。

ポイント3
セルフケアや治療をちゃんとやる。

3つ目のポイントは、花粉症自体のセルフケアや治療をきちんとやるということです。家庭でできるセルフケアとして有効なのが「鼻うがい」です。

鼻うがい液や専用の器具はドラッグストアやネット通販でも手軽に入手できます。痛そうで怖いという方もいらっしゃいます。冷たい真水などを鼻に通すとツーンとした痛みを感じますからね。でも、体液に濃度を合わせて、体温と同じくらいの温度に調整した食塩水を使えばほとんど痛みなどはなく、気持ちよさを感じます。

症状がひどい時には、きちんと医療機関で受診して、抗アレルギー治療を受けることをおすすめします。

また、最近は処方薬(医療用医薬品)の成分を市販薬(一般用医薬品)に採り入れた処方箋なしでも購入できるものがいろいろ発売されています。同じ薬でも症状や人によって効き方は違いますから、自分に合った薬を探しておきましょう。一般的には、抗ヒスタミン剤や噴霧ステロイドなどがおすすめです。

ちなみに、抗ヒスタミン剤には「眠くなる」作用があるとされています。医師のなかにも「花粉症で眠れないという人に、抗ヒスタミン剤は一石二鳥」などという方がいるのですが、これは間違っています。

抗ヒスタミン剤による眠気はとても不安定で、根本的な不眠の改善にはつながりません。まずは花粉症の症状を緩和することが大切。そして、花粉症の症状が治まっても不眠が続くようであれば、きちんと不眠の治療を受けるべきなので、その点は注意してくださいね。

花粉症の方は大変な季節ですよね。対策や治療をきちんとやって、快眠生活を過ごせますように!

コラム
花粉症の基礎知識

花粉症とは?

花粉によって生じるアレルギー疾患の総称であり、主にアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎が生じます。

花粉症の原因は?

さまざまな植物の花粉が原因になりますが、日本における花粉症の約70%はスギ花粉症だと推察されています。

スギ花粉が飛散する時期は?

1月下旬から3月にかけて、北海道以外の全国で飛散する量が多くなります。日本気象協会のウェブサイトでは、花粉飛散予測などが公表されています。
tenki.jp(日本気象協会ウェブサイト)

どんな治療法がある?

アレルギーを一時的に抑える対症療法と、原因を取り除く根治療法があります。症状がひどい場合には、専門の医療機関を受診しましょう。

セルフケアの方法は?

花粉症を予防し、症状を抑えるためには、暮らしの中で実践できるセルフケアが有効です。

セルフケアの例

  • 花粉の飛散情報に注意する。
  • 飛散が多い時の外出を控える。
  • 飛散が多い時は部屋の窓や戸を閉めておく。
  • 外出時にはマスクやメガネを使う。
  • 帰宅時は衣服や髪をよく払ってから入室する。
  • 洗顔やうがいを実施して、ちゃんと鼻をかむ。
  • こまめに部屋を掃除する。

コラム記事監修:大久保公裕先生(日本医科大学耳鼻咽喉科)
参考資料:『適確な花粉症の治療のために』(第2版)

関連記事

サイト内検索

サイトメニュー

特集お役立ち連載インタビューお知らせ